2023年9月12日、テントハウスの総合メーカーである山口産業株式会社が「宇宙」をテーマにしたコンテストを開催することを発表した。
山口産業はこのコンテストを足掛かりに宇宙産業という新たな領域に踏み込むこととなるが、同社のテント事業は宇宙業界でどのように活躍する可能性があるのだろうか。
本記事では、山口産業が宇宙産業でどのように活躍する可能性があるのかについて紹介している。
山口産業とは
山口産業は1976年に設立されたテントメーカー。産業用テント倉庫の製造において業界トップクラスであることに加え、大規模な公共空間やスポーツ施設など、幅広い領域でさまざまな「膜構造」の製造に取り組んでいる企業だ。
膜構造(テント)と宇宙の関係性
テントメーカーがどのように宇宙産業に参入する想定であるのか。
テントとはすなわち「膜構造」であるが、宇宙建築分野において膜構造はその軽量性や変形の容易性から度々注目されてきた。
例えば、宇宙船「IKAROS」は、太陽電池が貼りついた薄い「膜」を帆のように広げ、太陽光圧を受けて発電して得た電力で運用されていた。
他にも、人工衛星の運用終了後に大きな膜面を展開し、空気抵抗を増やすことで軌道から離脱するまでの期間を短縮をする「デオービット用展開膜」や、人工衛星を太陽から受ける100℃以上の熱から守る「サーマルブランケット」も宇宙×膜構造の例と言える。
他にも月面基地や宇宙ステーションなどへの活用の期待も大きい。
もちろんこれらの例だけでなく、宇宙における膜構造の可能性は無限に広がっているといえるだろう。
宇宙産業における山口産業の可能性
宇宙産業における山口産業の可能性について、注目すべきポイントは以下の2つ。
高品質なオリジナル膜材を自社開発
1点目は山口産業の技術力である。
同社はオリジナルの膜材を自社開発しており、その製品は高い耐候性があり、強風や豪雨にも強いと評判。
また、設計から開発、施行、品質管理まで全て自社で一貫しており、短納期・低コストを両立している。
さらに、オーダーメイドでも製造しており、自由自在に広さが変わる伸縮式や、テント屋根が移動するスライド式、膜素材と異素材を組み合わせるコンビネーション膜構造など、様々なニーズに対応可能だと言う。
上記のように、山口産業は高品質な製品を自社開発し、さまざまなニーズに対応してきた実績がある。
そのため、厳しい宇宙環境にも適応する製品の開発にも期待できるだろう。
幅広い業界の課題を解決!
2点目は、積極的に異業種に参入し、課題解決を行ってきた経験があるという点だ。
山口産業は、異業種との協業で社会課題に挑戦するプロジェクト「MEMBRANE LAB.」を立ち上げており、50年以上の歴史の中で培ってきた技術と異業種の知見を掛け合わせることで、農業や災害など、様々な領域の課題解決を目指してきた。
いわば、異業種参入の経験が蓄積されているということだ。その経験で得た業界の課題を探る能力や、解決策を見出す力が、宇宙業界でも活きると考えられる。
「膜構造コンテスト」で宇宙に進出!
山口産業は、「宇宙」をテーマとした膜構造コンテストを開催することにより、宇宙領域への進出を狙う。
このコンテストは、「膜構造の提案・製造を通して、幅広い事業領域で課題解決に取り組む」という理念を拡げるべく開催されるもので、その第一回目のテーマが「宇宙」。
コンテストを通して、未来のパートナーとなる可能性を秘めている学生からのアイデアを募集するとともに、膜構造に触れてもらい、膜構造の深い魅力や無限の可能性を感じてもらうことも目的としているとのこと。
応募概要は以下の通りである。
「第一回膜構造コンテスト」応募概要
- 募集期間:2023年9月4日から2024年1月26日
- 募集テーマ:宇宙×膜構造建築「宇宙~inflation~」
- 応募資格:日本国内の専門学校、短大、大学、大学院において建築、デザイン、宇宙などを学ぶ学生の個人、またはグループ。国籍は問わない。
<応募方法>
- 膜構造コンテストHPからエントリー
- 事務局より送付される作品シートとパースをメールで提出
<入賞特典>
- 最優秀賞(1名):賞金30万円+賞状 ※受賞作品はメディア掲載予定
- 優秀賞(3名):賞金5万円+賞状
<審査方法・受賞作品発表>
審査は一次書類審査と最終公開プレゼンテーションの2段階。
- 一次発表:2024年2月中旬
- 最終審査・発表:2024年3月上旬
さいごに
いかがでしたか。
今回は宇宙業界における山口産業の可能性について探ってみました。
自社開発で高品質を追求する精神と、社会課題の解決のもと積極的に異分野、新領域に挑む姿勢により、宇宙業界での活躍も期待できる。
今回のテントハウスの例のように、宇宙業界では、宇宙と一見関わりのないように思えるような産業でも参入し得る。
このような異業種の参入が業界の規模を大きくする上では必要不可欠になってくるであろう。