2022年11月22日、TRUST SMITH株式会社は、自社のAI/ロボティクス技術を応用し、宇宙産業へ参入することを発表した。
同社は、2019年1月に創業した、数々の高い技術を持つベンチャー企業。
2022年11月には、マイクロソフト社がグローバルに展開するスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」に採択されている。
本記事では、同社がなぜ宇宙産業に参入するのか、また、どのような宇宙事業を行っていくのかについて紹介する。
TRUST SMITH株式会社について
まずは、TRUST SMITH株式会社について簡単に紹介しよう。
同社はいくつかの傘下企業とともに、幅広い分野で研究開発を重ね、様々な技術・製品を産み出している。
ドローンに関しては、無人充電を可能にする世界最高制度の「自律着陸システム」を開発し、特許を取得した。
同社がこれまで研究・開発してきた他の製品も、最先端の技術を用いたものばかりだ。以下はその例である。
- 動く障害物を自動で回避しながら、膨大な数の部品を自動でピックアップするアームロボット(特許取得済みのアルゴリズムを活用)
- 1000台規模の移動ロボットを最適に制御する、様々な車両に対応可能な、磁気テープやQRコードが必要ない無人搬送車(AGV)
- 曲面を含む物体や上下反転してる物体にも対応可能な、入出荷の検品・仕分けを自動で行うAI
全ての製品や技術を紹介すると限りないため省略するが、同社はアルゴリズムはもちろん、自律搬送ロボットの機体開発や自動倉庫を構成する棚の製造技術など、ハードウェア開発の技術も所有している。
同社の技術についてより詳しく知りたい方は、ページ下部の製品ページURLをご参考いただきたい。
宇宙産業におけるTRUST SMITHの技術の活用
そんな最先端の技術を持つTRUST SMITHが現在参入を予定している宇宙事業は以下の3つ。
- 宇宙ステーション船内外の作業
ー 宇宙ステーション外における、動的に環境が変化する極限環境下でのアームロボットによる『頑強な自動ピッキング』 - 軌道上サービス(衛星への寿命延長、宇宙デブリ除去)におけるドッキング・寿命延長・修理・メンテナンス作業
ー 自動航行ドローンと画像認識アルゴリズムを活用した、『故障検知システムによる点検の自動化』 - 月面探査・基地開発作業
ー 様々な車両を自動運転するアルゴリズムを活用した、様々な外乱が想定される極限環境下での『月面探査機の自動運転』
同社は自社技術を組み合わせて活用することで上記の作業の自動化・効率化を図り、宇宙産業の抱える課題を解決する製品を開発するという。
宇宙産業の課題と参入の背景
TRUST SMITHの宇宙産業参入の背景には、近年の宇宙ビジネスの活性化がある。
20世紀の宇宙開発は、莫大なコストがかかり、かつ軍事利用が目論まれていたことなどからNASAやJAXAなどの政府機関による営利を目的としないプロジェクトがほとんどであった。
ところが近年は、テクノロジーの発展によりコスト低減が可能となった。
SpaceXによるロケット打ち上げ成功やGITAIによる宇宙用作業ロボットの開発など、民間企業による商用目的での宇宙開発が盛んになっている。
しかし、宇宙開発は他産業と比較して、作業にかかるリスクが高い。
例えば、宇宙空間での作業では以下のような課題が存在する。
- 人間は宇宙環境で放射線によるダメージを受ける
- 人間が取り組める作業時間は少なく、かつ取り組める作業自体にも限りがある
- 人間は宇宙で作業するまでに訓練を始め、多くの準備が必要であり、かつ命に関わるため、滞在期間にも大きな制約がある
今後の宇宙開発を促進していくうえでは、これらの課題の解決が求められる。
TRUST SMITHは、自動運転、経路計画、物体認識、データ分析などの技術を応用することで、これらの課題を解決していくとのことだ。
さいごに
米国の市場調査会社レポートオーシャンは、2021年10月4日の市場調査レポートにて、2027年には宇宙ロボット市場は約60億ドルとなると予測している。
TRUST SMITHは、
「政府機関だけでなく民間企業も積極的に投資を続ける宇宙産業は今後、より発展していくことが確実であり、TRUST SMITHはこれまでに研究開発してきたロボットの「目・足・腕・頭脳」となる技術を活用して宇宙産業へ参入し、人類の進歩に貢献していく。」
という。
アルテミス計画を追い風に世界中で宇宙開発競争が激しさを増す現在、同社の技術により日本は一歩先へ進めるのだろうか。
今後も要注目である。
参考: