2023年9月20日、株式会社天地人は、自治体の緊急対応を支援するために、要請に応じて全域の漏水リスク評価を迅速に実施する「災害時支援サービス」の開始を発表した。
その核となるのは、複数の人工衛星から得られるデータを基盤とした、同社が開発した漏水リスク管理業務システム「天地人コンパス 宇宙水道局」である。
同社はなぜ、このようなサービスを実現できたのだろうか?この記事では、その秘密に迫る。
日本の水道インフラの現状を知っていますか?
日本の水道インフラの多くは、高度経済成長期(1960年代後半~1970年代前半)に整備された。そのため、現在多くの管路が設置から約50年経過し、その寿命の限界に近づいている。
実際、日本全土の水道管の約19.1%が法定耐久年数を超過しており、老朽化が原因で全国各地で大規模な漏水事故が頻発。自治体はすでにこの問題に対処するための負担が増大している。
これらの老朽化した管路の点検、維持、修繕を従来の方法で実施するには莫大な費用がかかる上、短期間で実施することは非常に困難である。
今回、天地人が提供するこのサービスは、これら既存の問題に効果的に対応できる、自治体にとって強力なツールとなるのだ。
「天地人コンパス 宇宙水道局」と災害時支援サービス
天地人が開発した水道管の漏水リスク評価システム「天地人コンパス 宇宙水道局」は、約100m四方の範囲内で漏水リスクの可能性区域を5段階で確認・管理することが可能。
これは、人工衛星のビッグデータと水道事業体が保有する水道管路のデータ(材質、使用年数、漏水履歴等)を組み合わせ、自社開発したAI技術で解析することで、漏水可能性のある区域を判定する。
このサービスにより、点検費用が最大65%削減、調査期間が最大85%削減が期待できるという。
既に、2023年4月から福島市、6月から瀬戸市がこのサービスを導入している。
そして、今回新たに発表された「災害時支援サービス」では、さらに自治体の管路情報や漏水修繕履歴をこのシステムと合わせることで、ピンポイントで災害による土地の変化を正確に評価。
これにより、対象全域の漏水リスクを迅速に診断し、高リスクなエリアを明確に特定し、復旧計画の策定に貢献するというのである。
500機以上の衛星から情報を収集!?
では、なぜ同社はこのようなサービスを実現できたのだろうか。筆者が注目するのは、活用される衛星データの膨大さとデータサイエンスのスキルである。
同社は、なんと世界各国500機を超える人工衛星からのデータを日々収集しており、日本全国の過去から現在にかけての包括的なビッグデータを保有。
これにより、気候変動の影響も踏まえた漏水リスクを事業体ごとに提案することが出来るという。
また、同社が開発したシステムは、独自の特許出願技術(特願2023-48636 :漏水調査計画支援システム及び方法)であり、技術力の高さは疑う余地がないであろう。
このように、同社が有する膨大な衛星データと卓越したデータサイエンスのスキルが組み合わせることで、地中の水道管の漏水リスクを詳細に判断するサービスを実現したのである。
さいごに
いかがでしたか。
同社は、宇宙ビッグデータを最大限に活用し、宇宙から地域を見守ることで安全安心な社会の実現を目指している企業である。
このような同社が「災害時支援サービス」において、防災情報の共有や協力に焦点を当てた「有償モニター」の募集を開始している。関心のある自治体は、ぜひ以下のリンクから詳細をチェックしていただきたい。
参考
JAXAベンチャー 天地人、「天地人コンパス 宇宙水道局 」を活用した災害時支援サービスを開始。災害後に全域を迅速診断する有償モニターを募集
JAXAベンチャー天地人が提供する漏水リスク管理業務システム「天地人コンパス 宇宙水道局」。瀬戸市都市整備部水道課が国内二番目の自治体として採用