2024年11月20日(日本時間)、SpaceXが開発する超大型ロケット「Starship(スターシップ)」の6回目の飛行試験が実施された。本記事では、同ロケットについての試験結果と今後の計画についてご紹介します。
Starship 6回目飛行試験の概要
スターシップの6回目飛行試験では、5回目と同様に、スーパーヘビーブースターの空中キャッチとスターシップ宇宙船のインド洋着水を目指した。
注目ポイントは以下の3つ。
- スーパーヘビーブースター空中キャッチの再現
- 宇宙空間でのエンジン再点火
- 耐熱シールドの実験と操縦条件のテスト
まず、スーパーヘビーブースターは5回目の試験に続いて空中キャッチに挑戦し、その実現可能性を実証する予定であった。
次に、宇宙空間でのエンジン再点火。これは将来の軌道ミッションに向けて、軌道離脱に必要なエンジン燃焼を実証するものだ。最後に、耐熱実験と操縦条件のテストは、スターシップ宇宙船の再利用に向けて必要なデータを収集するためのものであった。
6回目飛行試験の結果
スーパーヘビーブースター
打ち上げ開始とともに、下段のブースター「Super Heavy(スーパーヘビー)」の33基すべての「Raptor(ラプター)」エンジンが着火。ロケットは順調に上昇。
その後、上段の宇宙船「Starship(スターシップ)」のエンジンに着火してから下段のスーパーヘビーを分離する『ホットステージング』に成功した。
着陸に関しては、今回の見どころの1つであった、スーパーヘビーを発射場所に戻し、発射台のアームでキャッチする『空中キャッチ』への再挑戦は、条件が整わず中止となった。そのため、ブースターは空中キャッチを行わない場合として事前計画されていた方向転換操作を実行し、メキシコ湾にゆっくりと、垂直に着水した。
スターシップ宇宙船
スターシップ宇宙船も、スーパーヘビーの分離後、順調に飛行。
宇宙空間では、スターシップ宇宙船に搭載された6基のラプターエンジンのうち1基の再点火に成功し、将来の軌道ミッションに向けて、軌道離脱燃焼を行うために必要な能力を実証した。
その後、大気圏再突入も成功させ、着水に向けてインド洋上空で反転。燃焼を開始し、ゆっくりと垂直に着水した。
今回は、熱防御や姿勢制御の観点から、あえて厳しい条件での大気圏再突入の試みであった。SpaceXは「最終的に宇宙船の帰還・再利用を目指すうえで、貴重なデータを得られた」としている。
また、今回の試験は、スターシップ宇宙船の試験としては初の明るい時間帯における着陸であった。そのため、着陸時の様子をはっきりと見ることができた。
今後の計画
今回の試験を終えて、SpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏は、自身のX(旧Twitter)アカウントで次のように述べている。
スターシップ宇宙船を海面に着水させることに成功した。この着水試験をもう一度実施し、うまくいけばタワーでのキャッチに挑戦する。
つまり、早ければ8回目の飛行試験で、スーパーヘビーだけでなくスターシップ宇宙船についても空中キャッチ試験が実施される可能性が高い。
また、マスク氏はスターシップの技術的課題について「同社はStarshipを着陸させ推進剤を補給し、改修や手間のかかる検査を要さずにすぐに打ち上げることを目指している。その目標を達成する上で最大の技術課題となるのが、即時かつ完全に再利用可能な耐熱シールドの実現である。」と指摘している。
今後の試験では、引き続き複数の耐熱試験が行われ、宇宙船の迅速な再利用に向けた準備が進められるのだろう。
さらにマスク氏は、「2年以内に無人宇宙船を数隻火星に送ることができると確信している。うまくいけば、4年以内に有人宇宙船を送ることができる」と意欲的な見解を示している。
さいごに
いかがでしたか。
今回の飛行試験は、前回の試験からわずか約1か月後の試験であった。SpaceXの技術は順調に成長しており、スターシップによる軌道ミッションや月・火星への到達もすでに目の前にあるのだろう。
引き続き、SpaceXの挑戦に注目していきたい。