2024年11月20日午前7時(日本時間)に、SpaceXの超大型ロケット「Starship(スターシップ)」の第6回飛行試験が実施される予定となっている。本記事では、スターシップのこれまでの飛行試験結果のまとめと、第6回飛行試験の注目ポイントについてご紹介する。
スターシップとはどんなロケット?
SpaceXが開発している超大型ロケット「スターシップ」は、人や貨物を地球周回軌道や月、火星、さらにはその先まで運ぶために設計された、史上最大のロケットだ。
大きな特徴は以下の3つ。
- 史上最大の大きさと打ち上げ能力
- 捨てずに繰り返し使える完全再利用型
- 打ち上げスパンの短さ
まず、スターシップは、全長約121メートルを誇り、下段の「スーパーヘビー」ブースターと上段の「スターシップ」宇宙船から構成されている。
およそ100~150tものペイロードを運ぶ能力を持ち、最大100人の乗組員と貨物を輸送可能。月面基地の建設や火星探査のため、また地球上のどの場所でも1時間以内で移動するための輸送手段として期待されている。
次に、従来の一般的なロケットは一度打ち上げられるとその多くの部分が使い捨てられて再び使うことはないが、「スターシップ」はブースター、宇宙船ともに再利用可能。機体を繰り返し使用することで打ち上げコストの大幅な削減を目指している。
最後に、一度使用して返ってきた機体をすぐに点検・打ち上げ準備を完了させて再度打ち上げる。飛行機のように着陸・打ち上げ(離陸)をスムーズに行うことで、高頻度に人や貨物を宇宙または地球上のどこかに輸送できるのだ。
5回目飛行試験までの試験結果
スターシップの初めての飛行試験は2023年4月に実施された。高度39㎞に達したものの、ブースター「Super Heavy(スーパーヘビー)」の33基のエンジンのうち6基が点火しておらず、姿勢を崩して速度が低下、空中での指令破壊となった。
一見失敗のように思えるが、同試験の主な目的は機体の回収ではなく、打ち上げに関するデータの取得であったため、目的の一部は達成していた。ライブ映像の現場では空中破壊後も盛り上がりを見せており、同社も非常に多くのことを学んだとコメントしている。
2023年11月に実施された第2回目の飛行テストでは、1段目のブースターを分離してから2段目に点火するのではなく、分離する直前から2段目のエンジンを起動する「ホットステージング」を実施。
結果、全てのエンジンの点火・分離に成功。しかし、その直後にブースターは爆発し、宇宙船も信号が途絶えたため飛行停止システムが作動した。
そして、2024年6月の第4回目の飛行試験でスーパーヘビーブースターの軟着陸および、スターシップ宇宙船の大気圏再突入とインド洋着水に成功。初の飛行試験からここまで、わずか1年と少しの出来事である。
そして1月程前に実施された5回目試験では、71mもある下段のブースター「Super Heavy(スーパーヘビー)」を発射場に帰還させ、「Chopsticks」と名付けられたアームで捕獲することに成功し、世間を驚かせた。
6回目飛行試験の注目ポイント
スターシップにおける6回目の飛行試験では、5回目の試験同様、スーパーヘビーブースターの空中キャッチと、スターシップ宇宙船のインド洋着水を目指す。
注目ポイントは、以下の3点だ。
- スーパーヘビーブースター空中キャッチの再現
- 宇宙空間におけるエンジン再点火
- 耐熱実験と操縦条件のテスト
まず、スーパーヘビーブースターは再び空中キャッチを成功させ、実現可能性を実証するという。またここでは、ブースターをアップグレードすることによって、キャッチ成功後にブースターから推進剤を排出するまでの時間が短縮されるという。
次に、宇宙空間におけるエンジンの再点火である。こちらは、将来の軌道ミッションに向けて、軌道離脱のために必要なエンジンの燃焼を実証するものである。
さいごに、いくつかの耐熱実験と操縦条件のテストにより、スターシップ宇宙船の再利用に向けてデータを取得する。意図的に厳しい条件で着水に向かうことで、耐熱材料や機体の姿勢制御の限界をテストしたりする予定だ。
さいごに
いかがでしたか。これまでのスターシップの試験結果を踏まえ、今回の6回目飛行試験では更なる進展が期待できるだろう。
スターシップの6回目飛行試験は、SpaceXのXアカウントにてライブ中継される。
スーパーヘビーブースターの空中キャッチは打ち上げから約7分後、スターシップ宇宙船の着水は打ち上げから約1時間5分後に実施される予定である。
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