日本時間2023年11月18日22時3分、アメリカの宇宙企業SpaceXは、同社が開発中の超大型ロケット「Starship(スターシップ)」の第2回目となる打ち上げ試験を実施した。
結果、完全な計画の達成には至らなかったものの1回目の打ち上げよりも非常に良い結果を残して大きな成長を見せ、世界中の人々を湧かせた。
本記事では、今回の打ち上げ試験の結果を前回のものと比較するとともに、Starshipが前回からどのような改良が加えられていたのか、その注目ポイントを簡単に紹介する。
【※前回の打ち上げ結果とStarshipが注目されている理由】
打ち上げ計画と結果の比較
Starshipは第1段ブースター「Super Heavy(スーパーヘビー)」と第2段目の大型宇宙船「Starship」からなるロケットであり、最初に1段目のSuper Heavyのエンジンに点火した後、1段目のSuper Heavyを切り離し、その後は第2段単体で宇宙空間へと向かう。
1段目のSuper Heavyと2段目のStarshipの機体はそれぞれ回収される予定で、今回はSuper Heavyは分離後、Starshipは90分間の飛行の後、近くの海へ垂直に着水する計画であった。
今年4月に行われた初回の打ち上げでは、打ち上げから数分後、高度約39㎞まで到達したものの制御不能となり、1段目の分離も失敗。予め搭載されていた破壊装置により爆破された。
また、第1段ブースターSuper Heavyのエンジン「Raptor(ラプター)」は、33基搭載されていたのだが、そのうち6基が停止するなどの異変があったことが認められた。
2回目となる今回の打ち上げでは、1段目のRaptorエンジン点火後、Starshipは順調に上昇。33基全てのRaptorエンジンが作動し、1段目の分離にも成功した。
その後2段目は飛行を続けて高度148㎞、時速2万4000㎞に達したが、その後信号が途絶えたため最終的に自動的に作動する飛行停止システムが作動し、爆破に至った。
一方、第1段の方も分離直後に予定外の爆発を起こし、地上への帰還は実現しなかった。
今回注目の改良ポイント
機体の回収には至らなかったものの宇宙への到達という結果を残して前回から大幅な進歩を見せたStarshipだが、前回と比較してどのような点について変更が行われていたのだろうか。
同社CEOのイーロン・マスク氏は6月、最初の打ち上げからStarshipの設計に1000を遥かに超える変更を加えたと述べているが、今回のミッションで最も注目されているのは1段目と2段目の分離について「ホットステージング」と呼ばれる方法を導入したことだろう。
この方法では、1段目のブースターを分離してから2段目に点火するのではなく、分離する直前から2段目のエンジンを起動する。これにより、1段目のブースターによる推進力をある程度保ったまま2段目の推進力を得られる。
この「ホットステージング」はロシアのロケットではよく用いられている方法で、マスク氏によるとこれをStarShipに導入することにより打ち上げることができる荷物の重量が10%ほど増加するとのこと。
しかし、ブースターは第2段目のエンジンからの排気による熱をそのまま浴びることになるため、その対策が必要となる。
マスク氏は、「これは第2回目の打ち上げにとって最もリスクのあることだ」と述べていた。
他にも、課題となっていた第1段目のRaptorエンジンに関して、燃料漏れを減らすためにガス供給装置にも改良が施されていた。
その結果、今回は上記で述べたように第1段と第2段の分離や課題となっていた全てのRaptorエンジンへの点火に成功している。
さいごに
今回の打ち上げにおいては最終的に爆破とはなったものの、史上最大のロケットが宇宙空間に到達したことは非常に大きな成果だろう。
NASAのビル・ネルソン長官は今回の打ち上げにおいて進歩が生まれたことを祝福しており、「今日の打ち上げ試験は学びの機会であり、再び宇宙に向かう。NASAとSpaceXは人類による月、火星、そしてその先への再出発に向けて協力します」と述べた。
今回の結果は前回の失敗に対する学びが見られ、将来のStarshipの成功を期待させるものとなった。次回の打ち上げではどのような進化を見せてくれるのか、楽しみである。
参考
SpaceX changing Starship stage separation ahead of next launch