QPSホールディングスの決算内容を解説・考察|2026年5月期Q3決算

2026年4月13日、宇宙デブリ除去などの軌道上サービスを手掛ける小型SAR衛星の開発・運用事業を行う株式会社QPSホールディングスは、2026年5月期第3四半期(Q3)決算を発表した。

本記事では、最新決算のポイントと事業の進捗について整理する。

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QPSホールディングスの概要

QPSホールディングスグループは、福岡市に本社を置き、小型SAR(合成開口レーダー)衛星の研究開発から運用、観測データの販売までを一貫して手がける九州大学発の宇宙ベンチャーである。

高解像度SAR衛星による観測データを中核に、災害対応、インフラ監視、安全保障など幅広い分野での活用を視野に事業を展開。衛星・地上システム・データ提供を自社で統合的に開発・運用する点を強みとし、技術力と市場対応力の両立を図っている。

2023年12月に、事業会社であるQPS研究所が東京証券取引所グロース市場へ上場。そして、2025年12月に、QPS研究所を中核子会社とする持株会社QPSホールディングスを設立し、グループ経営体制へ移行した。グループ全体の経営管理や資本戦略の柔軟性を高めることで、持続的な成長と事業拡大を目指している。

QPSが開発する小型SAR衛星のイメージ画像
QPSが開発する小型SAR衛星のイメージ画像(QPS研究所のPR TIMESより引用)
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QPSホールディングスの決算内容|2026年5月期Q3

QPSホールディングスが発表した2026年5月期Q3決算は下図の通りである。

QPSホールディングスの決算内容(2026年5月期Q3)
QPSホールディングスの決算内容(2026年5月期Q3)©Space Connect

2026年5月期Q3の決算概要

同社が発表した2026年5月期第3四半期(3Q)決算では、投資フェーズにありながらも、衛星コンステレーションの拡張に伴う先行投資が続く中、事業拡大に向けた動きが進んだことが示された。

第3四半期まで(累計)の売上高は16億1,100万円となり、前年同期の18億3,700万円から減少したものの、官公庁向け案件や防衛省向け案件の進展により、通期売上予想は上方修正されている。

一方で、営業損失は14億5,000万円(前年同期2,200万円)と赤字幅が拡大した。これは主に、衛星運用機数の増加(償却対象2機→6機)に伴う減価償却費の増加や、通信費の増加、さらに人員増加に伴う人件費の増加などによるものである。

また、経常損失は1億8,200万円(前年同期1億9,500万円)、当期純損失は1億8,700万円(前年同期18億3,300万円)となり、最終損益ベースでは赤字幅が大幅に縮小している。これは補助金収入の計上などが寄与したものとみられる。

なお、減価償却費などを加味したEBITDAは11億100万円(前年同期3億4,000万円)と大幅に増加している。

総じて今回の決算では、売上は一時的に減少したものの、衛星数の増加に伴うコスト先行により営業赤字が拡大する一方、EBITDAの成長や最終損益の改善が見られており、将来的な収益化に向けた基盤整備の進展が見られた決算内容となった。

財務状況と受注残高

衛星事業は長期的な投資を必要とするビジネスであり、同社は、複数の資金調達手段を組み合わせることで、財務基盤の強化を進めている。

2026年1月には借入総額62億円のシンジケートローン契約を締結し、衛星コンステレーション構築に向けた資金基盤を確保した。さらに、2026年3月には第三者割当増資を実施し、総額約152億円の資金調達を行っている。割当先には、スカパーJSAT、三井住友海上火災保険などが含まれており、戦略的資本提携として実施されている。

これらの資金は主に、QPS-SAR25〜38号機の衛星製造および打上げ費用に充当される予定であり、コンステレーションの早期構築と事業拡大を加速させる狙いがある。

また、同社は宇宙戦略基金(支援上限:約212億円)にも採択されており、公的資金の活用によってQPS-SARの量産化および競争優位性の確立を進めている。

補助金、銀行融資、エクイティファイナンスを組み合わせた資金調達構造により、同社は短期的な資金繰りリスクを抑えつつ、中長期的な成長投資を継続できる体制を構築していると考えられる。

事業進捗

防衛省向け委託契約締結

2026年2月、同社グループは防衛省が進める『衛星コンステレーションの整備・運営等事業』に関連し、株式会社トライサット・コンステレーションおよびスカパーJSAT株式会社と画像データ取得業務委託契約を締結した。

本契約では、QPS研究所は小型SAR衛星による画像データ取得の一部を担う位置づけとなる。事業全体の規模は約2,831億円(税込)とされる大型案件であり、その中でQPS研究所の売上見込は約697億円(税抜)とされている。

契約期間は2026年から2031年までの約5年間であり、年度ごとに段階的に売上が計上される見込みとされる。

同社にとっては中長期的な収益基盤の一つとなる可能性があり、防衛分野におけるSARデータ活用の広がりを踏まえると、本契約は事業領域拡大に寄与する取り組みと位置づけられる。

今期の打上げ計画を一部変更

衛星の製造および運用は概ね計画通りに進んでおり、今期はすでに4機の打上げを完了している。

当初は通期で6機の打上げを予定していたが、Rocket Lab社の打上げ計画変更の影響により、このうち1機については2026年6月以降へ後ろ倒しとなった。

また、過去に不具合が確認されていたQPS-SAR5号機については復旧対応が進められ、2026年2月より商用運用が再開されている。

さらに、2026年4月には新たに3機分の打上げ契約を締結しており、これにより累計で10機分の打上げ機会を確保している。

このように、一部スケジュールの見直しはあるものの、打上げ機会の確保は進んでおり、コンステレーション拡大に向けた体制整備は継続している状況にある。

世界2位の稼働衛星数を誇る

同社は、小型SAR衛星ビジネスを実現可能な世界でも限られたプレイヤーの一社として位置づけられている。資料では、こうしたプレイヤーは世界で5社にとどまるとしており、同社の稼働衛星数はフィンランドのICEYE(約50機規模)に次ぐ9機と整理されている。

一方で資料では、人工衛星は太陽電池によって必要な電力を確保しており、衛星を小型化すると、主に分解能と引き換えに画質や観測頻度などの性能低下を招くとしている。同社は顧客との対話を重ねながら、市場に求められる小型SAR衛星の開発を進めていく予定だ

さいごに

今回の決算からは、衛星コンステレーションの拡張に伴う先行投資が継続する中で、事業規模の拡大に向けた基盤整備が進んでいる状況が示された。小型SAR衛星分野では、限られたプレイヤーの中で衛星機数の拡大と運用体制の構築が進められており、同社もその一角としてコンステレーションの構築を進めている段階にある。

今後は、衛星機数の増加に伴う観測頻度の向上と、データ販売の拡大がどのように業績へ反映されていくかが焦点となりそうだ。

QPS研究所は現在、様々なポジションにて人材を募集している。興味のある方は、業界特化型の人材マッチングサービス「スぺジョブ」をチェックしていただきたい。

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参考

株式会社QPSホールディングス 2026/5期 3Q決算説明資料

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