Blue Origin開発、98mを超える巨大ロケット「New Glenn」初打ち上げの結果は?
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2025年1月16日(日本時間)、ジェフ・ベゾス氏設立の米宇宙企業Blue Originが開発する新型の巨大ロケット「New Glenn(ニューグレン)」の初打ち上げが実施され、ペイロードの目的軌道に到達成功した。

本記事では、初ミッションの概要や結果の詳細、今後の展開についてご紹介する。

打ち上げ結果の詳細

1月16日、「New Glenn」は午後16時過ぎ(日本時間)にリフトオフ。数分後に第一段目の分離と第二段目のエンジン点火にも成功した。

その後、第一段エンジンは分離後に着陸に向けて降下を開始したものの、高度約25.6㎞地点で一段目の速度と高度を示すテレメトリが停止。軟着陸・回収には至らなかった。

一方、同社が開発した衛星「Blue Ring Pathfinder」を搭載した第二段は順調に上昇。

エンジンの一時停止・再点火もクリアし、最終的に目的の中軌道(遠地点19,300㎞、近地点2,400㎞、軌道傾斜角30°)への到達に成功した。

同衛星は現在データを受信し、正常に機能しているとのこと。今後、運用システムや地上システム、宇宙空間での飛行能力等の様々なテストが行われる予定だ。

New Glennと初打ち上げのミッション概要

「New Glenn」は全長98m以上の巨大ロケットだ。

低軌道から静止軌道(約36,000㎞)にペイロードを送るための静止トランスファー軌道(GTO)に13t、高度2,000㎞以下の低軌道(LEO)に45t以上の貨物を運ぶことが可能。ミッションに応じてロケットの段数を2段または3段に調整でき、様々なペイロードと目的地に対応できる。

また、第一段エンジンは第二段との分離後地上に再着陸し、最低でも25回再利用できるように設計されている。

「New Glenn」の今回のミッション「NG-1」では、商業技術を軍事用途に活用することを目的とする国防イノベーションユニット(DIU)のプロジェクトの一環として、Blue Originが開発した「Blue Ring Pathfinder」を搭載した。

「Blue Ring Pathfinder」は異なる軌道間の移動が可能な宇宙モビリティプラットフォームであり、1つ以上のペイロード(最大2.5t)を搭載し、それぞれをGEO(静止軌道)、シスルナ(地球と月の間の軌道)、および惑星間空間など、各々の目的地に輸送することができる衛星である。

そして、打ち上げはフロリダ州ケープ カナベラル宇宙軍基地の LC-36発射台で実施された。

同発射台は元々アトラス II/IIIを打ち上げる発射台であり、Blue Originが10億ドル以上をかけて再建して2021年に完成したもので、今回が初めての打ち上げとなった。

当初は1月10日に打ち上げる予定であったが、天候上の理由により13日に延期。

しかし、13日には油圧システムの一部を動かす補助動力装置のパージライン(不要な推進薬等を排出する配管)に氷が形成されたため、16日に再延期となっていた。

さいごに

いかがでしたか。

「New Glenn」の初打ち上げは、Blue Originにとって新たなステージへの大きな一歩と言える。

第一段と第二段の分離、衛星の軌道投入、第二段エンジンの再点火など、複数の重要なミッション要素が成功したことで、同ロケットの性能と信頼性の一端が証明された。

New Glennは今後Amazonが開発する低軌道通信衛星「Kuiper」をはじめに、AST SpaceMoblileの通信衛星の打ち上げなど、多岐にわたるミッションを担う予定だ。

ジェフ・ベゾス氏が設立したBlue OriginとAmazonはともに、宇宙輸送・低軌道通信衛星分野でこれまでほぼ独走状態ともいえたSpaceXに対抗する企業として、宇宙産業全体の競争をさらに活性化させるだろう。

Blue Originは、今回の打ち上げを通して以下のように述べている。

第一段ブースターエンジンを降下中に失ったが、初打ち上げにおけるエンジンの再着陸はかなり野心的な挑戦であった。

今回取得した経験・知識をさらに改良し、春に行う次の打ち上げに活かしていく。

今回の打ち上げを起点に、Blue Originがどのようにその存在感を高めていくのか。同社の今後の打ち上げも楽しみである。

参考

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