
政府は2026年3月27日、人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(以下、宇宙活動法)の改正案を閣議決定した。
今回の改正では、人工衛星を搭載しないロケット単体の打上げや、人工衛星を分離しない形での打上げを新たに法律の対象として加えている。
本記事では、今回の改正内容と日本の宇宙産業への影響について解説する。
宇宙活動法改正の概要
宇宙活動法は、ロケットの打上げ・人工衛星の管理に係る許可や人工衛星等の落下等により生じる損害の賠償に関する制度等を定めた法律で、2018年に施行された。
これまで同法では、主に地球を回る軌道などで使用される人工衛星を搭載したロケットの打上げを許可制度の対象として位置づけ、あわせて打上げ許可に係る審査や、事故時における政府補償の制度を定めてきた。
一方で、次のような打上げは、法律上の位置づけが必ずしも明確ではなく、別の法制度や個別の枠組みによって運用されてきた。
- 搭載物のないロケット単体の打上げ
- ダミーペイロード等の分離されない人工の物体のみを搭載した打上げ
- 宇宙活動法の人工衛星の定義に該当しない、地球を回る軌道等で使用しない人工の物体の打上げ
今回の改正では、上記のような打上げも新たに法律の対象に組み込み、試射や実証を含めて一貫した制度の下で管理。これにより、対象となる打上げは損害賠償や政府補償に関する法制度の適用も受けることになる。

日本の宇宙産業への影響
① 開発段階のハードル低下
ロケット単体やダミーペイロードなどを用いた試験打上げが政府補償の対象となることで、損害賠償や政府補償の枠組みの適用を受けられるようになる。これにより、これまで事業者が負担してきたリスクの一部が制度的に分担される形となる。
ロケット開発は、初期段階ほど技術的不確実性が大きく、資金調達や保険の引受において制約が生じやすい分野である。そのため、今回の改正による制度整備は事業リスクの見通しを立てやすくする方向に働いていくと考えられる。
結果として、スタートアップや大学発ベンチャーを含む新規参入のハードルが相対的に低下する可能性がある。
② 打上げ回数の増加
開発段階のハードル低下により、開発の進め方も、「一度の打上げで完成形を目指すもの」から、「段階的に検証を重ねながら改良していくもの」へと移っていく可能性がある。
こうした変化は、試験段階を含む打上げの実施機会を広げ、全体としての打上げ回数の増加にもつながり得る。
国際的には、段階的な検証と改良を繰り返す反復型の開発モデルによって、スピード感を持って開発を進める例がみられる。日本においても同様のアプローチを取りやすくなれば、打上げ回数が増加し、産業全体の学習速度や技術蓄積の向上につながっていく可能性がある。
③ 国際競争力の強化
宇宙輸送分野では、技術力だけでなく、制度設計そのものも競争力を左右する要素となっている。とくに、小型ロケットや実証ミッションの分野では、柔軟な制度の有無が、開発の進めやすさや事業機会に影響を与える可能性がある。
また、打上げ機会の増加により、ロケット開発や打上げ事業そのものにとどまらず、部品供給、地上設備、運用支援といった周辺領域にも波及する可能性がある。
加えて、打上げを見学する来訪者の増加を通じて、宿泊、交通、飲食、物販など観光や地域産業にも一定の経済効果をもたらすことが期待される。
さいごに
今回の宇宙活動法改正は、日本の宇宙輸送政策における重要な見直しの一つといえる。これまで制度上の位置づけが明確でなかった試験打上げなども対象に含めることで、人工衛星の打上げを主に想定してきた制度を、宇宙輸送全体を見据えたものへと広げる動きが進みつつある。
一方で、制度の拡充は審査体制や安全管理の強化と表裏一体であり、安全性の確保と産業振興の両立が今後の大きな課題となる。政府が打上げ能力の強化を掲げる中で、今回の改正が日本の宇宙産業の底上げにつながるかどうかは、今後の運用次第といえそうだ。
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参考
人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(2026-04-05閲覧)








