小型実証衛星4号機「RAISE-4」の打上げが12月7日に決定
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JAXAは、革新的衛星技術実証4号機のうち、小型実証衛星4号機(RAISE-4)の打上げ日時が2025年12月7日(日)に設定されたことを公表した。打上げは、ニュージーランド・マヒア半島からRocket Lab社の小型ロケット「Electron」で実施される予定である。

本記事では、ミッションの概要や打上げ後の運用方法、次期5号機の動向についてご紹介する。

革新的衛星技術実証4号機の概要

「革新的衛星技術実証4号機」は、JAXAが運営する「革新的衛星技術実証プログラム」の第4回目の実証機会である。

本プログラムは、大学や研究機関、民間企業が提案した新技術や超小型衛星 (キューブサット等) に宇宙実証の機会を提供することを目的としている。リスクは高いが、将来的に高い成果が期待される「革新的」な技術を積極的に取り上げ、日本の宇宙技術力および宇宙産業の競争力強化に寄与する点が特徴だ。

実証テーマは通年で公募されており、技術成立性や国内の宇宙ビジネス促進に向けた実証意義の高さなどが評価される。

今回の4号機は、過去の実証での成果を踏まえつつ、新たな技術テーマを多数採択している。構成は8つの新技術を搭載した小型実証衛星4号機「RAISE-4」と8機のキューブサットによる計9機体制となる。

過去記事では、革新的衛星技術実証プログラムの過去の実証例や4号機の実証内容について詳しく解説している。併せてチェックしていただきたい。

「RAISE-4」ミッション運用方法

革新的衛星技術実証4号機システム構成の概要図
革新的衛星技術実証4号機システム構成(出典:JAXA 革新的衛星技術実証4号機 プレスキット

今回打上げ日時が決定されたのは、「革新的衛星技術実証4号機」のうち、8つの新技術を搭載した小型実証衛星4号機「RAISE-4」である。

本衛星は、実証テーマ提案者からの要求を受けて衛星の運用を行い、実証機器の実験データおよび実験実施時の環境データを提供。多様な技術テーマを効率的に運用するため、地上と衛星を結ぶ統合的な運用システムが整備されている。

実証テーマの提案者は、専用のWEBブラウザを通じて実験内容を入力し、衛星に要望をリクエストする。

地上システムは、提出されたリクエストをもとに衛星の運用計画を組み立て、必要なコマンドを作成して衛星へ送信する。 衛星はその指示に従って軌道上で実験を実施し、取得したデータを蓄積。後にXバンド電波を用いて地上へ送り返す。

受信したデータはテーマごとに整理され、提案者は再びWEBブラウザを開くだけで、自分の実験結果を確認できるという仕組みだ。 つまり、実験の指示からデータ取得までが一つのオンライン環境で完結するため、研究者や企業にとって非常に利便性の高い実証プラットフォームとなっている。

4号機に搭載される実証テーマ

小型実証衛星「RAISE-4」には多岐にわたる技術が採択されている。ここからは、搭載される技術のうち、4つをピックアップしてご紹介する。

LEOMI(NTT株式会社)

920 MHz 帯を用いた衛星 MIMO (マイモ:multiple-input multiple-output)[※1]技術を活かし、IoT デバイスとの通信効率を向上させることを目的としている。

地上の LPWA (低電力広域通信) 技術と連携できる通信プラットフォームとして、世界的に需要が拡大する IoT データを衛星で“安く・効率的に拾う”仕組みの実現を目指す。

機器構成としては、TRX (送受信モジュール)、アンテナ部などが[markar]小型形状で構成されており、総重量は約 3.7 kg[/markar]。

[※1]MIMO:無線通信において、送信機と受信機の双方が複数のアンテナで通信を行い、伝送容量を向上させるための技術

HELIOS-R(サカセ・アドテック株式会社)

革新的衛星技術実証4号機軌道上外観図
革新的衛星技術実証4号機軌道上外観図出典:JAXA 革新的衛星技術実証4号機 プレスキット

折りたたみ膜 (軽量構造) を展開し、大面積の太陽電池やアンテナとして機能させる(上画像:06)。これにより、 小型衛星でも大電力の発電や高利得アンテナが実現可能となり、通信容量や観測性能を大きく向上させるポテンシャルを兼ね備える。次世代の小型衛星の性能を根本から変えうる重要技術といえる。

CF-CAM(マッハコーポレーション株式会社)

CF-CAM は、宇宙の強い放射線環境に耐える次世代高性能CMOS撮像素子を使ったカメラの軌道上実証である。

国産の撮像素子を宇宙で本格運用できれば、地球観測や宇宙ミッションでの利用領域が広がり、海外製センサーへの依存を減らすことにもつながる。

小型衛星でも高画質のカラー撮影ができるようになるため、商業利用や科学観測にも応用可能で、日本発の宇宙用カメラ技術の競争力強化に直結するテーマとなっている。

AIRIS(三菱重工業株式会社)

次世代宇宙用MPU (マイクロプロセッサユニット) を用い、AI 処理による物体 (例:海上の船舶) を軌道上でリアルタイムに検知する技術を実証する。検知データを衛星上で処理した上で、必要な情報のみを地上に送信することで、通信帯域・電力を効率活用する運用を目指す。

その他の実証技術についてはこちら

次の5号機について

革新的衛星技術実証プログラムでは、2年に1回の打上げ実証を計画しており、4号機の次に打ち上げられる5号機についても、すでに実証が決まっているテーマがある。

2022年10月に軌道投入に失敗した「革新的衛星技術実証3号機」の実証テーマのうち、再チャレンジを希望する九州工業大学の「民生用半導体と汎用機器の宇宙利用拡大を目的とした軌道上実証」と4号機実証テーマから号機変更した香川高等専門学校の「軌道維持用推進システムを搭載した次世代CubeSatの技術実証」だ。

2年後の打ち上げに向け、上記2つのテーマ以外は別途公募が予定されている。

さいごに

RAISE-4 は、日本の宇宙技術の将来を切り開く多様な実証テーマを軌道上で検証する重要な機会となる。今回のミッションで得られる成果は、次世代の小型衛星開発や新しい宇宙ビジネスの創出につながるものだ。今後の打ち上げと各テーマの成果に引き続き注目していきたい。

本記事にて搭載される実証テーマをご紹介した三菱重工業は、航空宇宙分野における複数のポジションで人材を募集している。興味のある方は、こちらから詳細をご確認いただきたい。

打ち上げ詳細

  • 打上げ予定日時:2025年12月7日(日) 12時00分 (日本時間、24時間表記)
  • 打上げ手段:Electron(Rocket Lab社)
  • 打上げ場所:ニュージーランド・マヒア半島 第1発射施設

参考

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