準天頂衛星システム「みちびき5号機」を搭載したH3ロケット8号機の打上げが2025年12月22日に実施された。
本記事では、同日行われた記者会見の内容をもとに、打上げの結果と現在わかっている状況について整理する。
H3ロケット8号機の打上げ結果
H3ロケット8号機による準天頂衛星システム「みちびき5号機」の打上げは、12月22日午前10時51分30秒に種子島宇宙センターから実施された。
ロケットは第1段燃焼から第2段の運用に移行し、しばらくは順調に飛行していたが、打上げから約25分後に第2段エンジンの2回目の燃焼で異常が発生。予定していた準天頂軌道へ投入することができなかった。
現時点で原因は不明としており、JAXAおよび関係者が詳細な解析を進めている。
現在わかっている状況
H3ロケット8号機では、第2段エンジンの1回目の燃焼で地球周回軌道に入り、その後しばらく無推力で飛行したのち、2回目の燃焼によって高度を上げ、準天頂軌道へペイロードを投入するという手順が取られる予定であった。
今回は、この第2段エンジンにおける2回目の燃焼が予定より早く停止したことが確認されている。
また、第2段の運用に関して、予定との時間のずれが確認されている。第2段エンジン1回目の燃焼停止が約27秒遅れ、2回目の燃焼開始（推力立ち上がり）も約15秒遅れていたと説明されている。
さらに、第1段燃焼中の段階から、第2段エンジンの液体水素タンクで圧力低下が見られていたとされる。圧力低下は推力不足につながる可能性があり、その影響で第2段エンジンの第1回燃焼時に加速が十分でなく、予定していた速度に達するまで時間を要した可能性がある。ただし、こうした現象が最終的な異常とどのように関係しているかについては、現時点では確定していない。
第2段エンジンの第2回燃焼については、エンジン自体は着火したものの、その直後に停止した状態となった。停止の指令そのものは取得できていないことも説明されており、詳細なメカニズムは引き続き解析が進められている。
みちびき5号機については、ロケットとの通信が終了したため、分離が行われたかどうかを含めて状況が把握できていない。分離が行われている可能性も排除されておらず、現時点では衛星が喪失したと断定できる状況にはないとしている。
補足：12月17日の打上げ中止について
今回の8号機は、12月17日に射場の冷却注水設備の異常により打上げが中止されていた。原因は、加圧用の窒素ガスを制御する手動弁の開度が想定より小さく設定されていたことで、水タンクの加圧が不足し、必要な水量を確保できなかったことにあった。
当日は作業性を高めるため手順の一部が変更されており、あわせて開度確認用の新しい治具が今回から導入されていた。しかし、手順変更時の管理、新しい治具を用いる際の事前検証や初回作業時の確認体制が十分ではなかったと説明されている。
H3は運用初期段階にあり、現場では安全性を確保しつつ効率化を進めるための変更が日々発生する。その中で、品質を確保するための仕組みを徹底することが重要であるとして、検証手順や手順書反映の強化など体制の改善が進められている。
なお、8号機については従来の手順で作業を行い、想定どおりの流量が確保されることが確認されたうえで今回の打上げに臨んでいた。
さいごに
今回の打上げでは第2段運用中に新たな異常が発生し、みちびき5号機を予定軌道に投入することができなかった。原因は現時点で特定されておらず、衛星の状態についても確定していない。
H3は依然として運用初期段階にあるなかで、射場側・ロケット側それぞれの課題に向き合い、体制や仕組みを含む改善を進めていくことが求められる。
今後の詳細な解析結果と続報が注目される。
参考
