
2026年7月14日、小型衛星の開発・運用および地球観測データ事業を手がける株式会社アクセルスペースホールディングスは、2026年5月期通期決算を公開した。
本記事では、最新決算のポイントと事業の進捗について整理する。
目次
アクセルスペースの概要
アクセルスペースグループは、小型地球観測衛星の開発・製造から運用、取得した地球観測データの提供までを一貫して手がける日本の宇宙企業である。
2008年に東京大学発のベンチャー企業として株式会社アクセルスペースが設立。その後、2020年に単独株式移転の方式により純粋持株会社として株式会社アクセルスペースホールディングスが設立され、2025年8月に東京証券取引所グロース市場へ上場した。東京都中央区日本橋の本社にはクリーンルームを備え、衛星の設計・製造を行っている。
自社衛星「GRUS」シリーズによる衛星画像データサービス『AxelGlobe』と、顧客向け小型衛星プロジェクトの設計・製造・打上げ・運用を提供する『AxelLiner』の2事業を通じて、官民顧客に衛星ソリューションを提供している。

アクセルスペースの決算内容|2026年5月期通期決算
2026年5月期通期決算概要
アクセルスペースが発表した2026年5月期通期決算は下図の通りである。

アクセルスペースホールディングスの2026年5月期における売上高は25億800万円となり、前期比で58.1%増加した。
特に、自社衛星の画像や関連サービスを提供するAxelGlobe事業が大きく成長した。AxelGlobe事業の売上高は9億8,600万円となり、前期の2億6,000万円から約3.8倍に拡大している。防衛省の「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」をはじめとする政府系案件が、売上拡大をけん引した形である。
一方、営業損失は38億2,200万円、親会社株主に帰属する当期純損失は40億5,700万円となり、前期から赤字幅が拡大した。
費用面では、性能検証衛星「GRUS-3α」の打ち上げ費用や高分解能衛星の開発費が増加したほか、人件費や採用費なども損益を押し下げた。足元では収益性よりも、今後の衛星コンステレーション拡大に向けた投資が先行している状況がうかがえる。
2027年5月期は、売上高90億円を見込む。2026年5月期から約3.6倍へ拡大する計画である。一方、営業損失は8億円、親会社株主に帰属する当期純損失は2億4,000万円を見込んでおり、赤字幅は縮小するものの、引き続き研究開発や事業基盤の整備を優先する方針とみられる。
財務状況と受注残高の状況
財務状況
2026年5月期末におけるアクセルスペースホールディングスの現金及び預金は、58億1,500万円となった。前期末の50億600万円から増加しており、東京証券取引所グロース市場への上場に伴う新株発行や、長期借入れによる資金調達が財務基盤を支えている。
一方、GRUS-3に関わる資産の計上により、固定資産は前期末の1億2,600万円から35億8,300万円へ大きく増加した。調達した資金を、今後の地球観測サービスを支える衛星や開発設備へ振り向けている状況である。
キャッシュ・フローを見ると、営業活動による支出は約51億2,300万円、投資活動による支出は約21億1,700万円となった。これに対し、財務活動による収入は約78億3,400万円となっており、株式上場などによる資金調達で事業投資を支えている。
受注残高
2026年5月期末の受注残高は、前期比366.3%増の533億7,500万円となった。内訳は、AxelGlobe事業が430億7,400万円、AxelLiner事業が103億100万円である。現在の年間売上高を大きく上回る受注を確保しており、複数年度にわたる売上の基盤が積み上がっている。
受注残高の増加をけん引したのが、防衛省の「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」である。アクセルスペースは、同事業における唯一の光学画像提供者として参画しており、事業期間を通じた同社グループの契約総額は436億円となる。
顧客向け衛星サービスを展開するAxelLiner事業では、経済安全保障重要技術育成プログラムや、JAXA、Pale Blueに提供する軌道上実証サービスなどが今後の売上を支える見通しである。
ただし、受注残高の全額が直ちに売上として計上されるわけではない。防衛省案件では、画像データの提供状況や事業年度ごとの契約内容に応じて、2031年3月までの事業期間にわたり段階的に売上へ反映される。
AxelLiner事業についても、衛星の開発進捗や部材の納入、打上げ、顧客による検収などに応じて売上計上の時期が決まる。そのため、プロジェクトの進行状況によっては、売上の計上が当初の計画から前後する可能性がある。
受注残高の大幅な増加により、将来の売上につながる案件が積み上がっている一方、今後は受注案件を計画通り履行し、利益やキャッシュ・フローの改善につなげられるかが焦点となる。

事業の進捗状況と計画
GRUS-3の7機打上げで地球観測体制を拡大
2026年7月、アクセルスペースは次世代地球観測衛星「GRUS-3」7機の打上げに成功した。
その後、電力発生や通信、姿勢制御など、軌道上における衛星の健全性を確認するクリティカル運用を正常に完了している。今後は7機の初期運用を進め、2026年中をめどにGRUS-3で取得した地球観測データによるサービスを開始する計画である。
衛星数が増えることで、撮影できる面積の拡大や同一地点を観測する頻度の向上が期待されており、これにより、防衛やインフラ、地図、農業、環境監視など、継続的な観測を必要とする分野への対応力が高まる。
2027年5月期の売上計画を達成するうえでも、GRUS-3の商用運用を予定通り開始し、衛星画像の提供へつなげられるかが重要となる。
防衛省案件がAxelGlobe事業の成長をけん引
AxelGlobe事業では、防衛省の衛星コンステレーション事業におけるサービス提供が2026年4月から始まっている。
同事業では、三菱電機、スカパーJSAT、三井物産が設立したトライサットが事業者となり、複数の商用衛星事業者から取得した画像データを防衛省へ提供する。
アクセルスペースは、唯一の光学画像提供者として参加している。光学衛星は、対象物を人の目に近い形で確認できるため、地形や建物、車両などの状況把握に適している。AxelGlobe事業全体としては、2027年5月期に売上高60億8,000万円を見込んでいる。前期の9億8,600万円から約6.2倍へ拡大する計画であり、防衛省案件の通期寄与とGRUS-3の商用運用開始が成長を支える。
一方、顧客が求める撮影頻度や画像品質、提供速度などの要求を継続して満たす必要があり、大型契約の獲得だけでなく、GRUS-3を含む衛星群を安定して運用し、契約に沿った画像データを提供できるかが今後の焦点となる。
AxelLiner Laboratoryで軌道上実証需要を取り込む
AxelLiner事業では、宇宙用機器やコンポーネントの軌道上実証に特化した「AxelLiner Laboratory(AL Lab)」の事業化が進んでいる。
軌道上実証とは、衛星用部品や推進機などを実際に宇宙へ打ち上げ、放射線や真空、激しい温度変化といった環境下で正常に動作するかを確認する取り組みである。
2026年6月には、JAXAとAL Labの提供に関する契約を締結した。JAXAが進める宇宙機用高機動型電気推進の基礎研究において、2026年度から実証期間の終了まで4年程度をかけてサービスを提供する予定である。
また、小型衛星向け推進機を開発するPale Blueとも契約を締結しており、同社が開発する小型ホールスラスタの軌道上実証を2027年に予定している。
宇宙用機器は、実際の宇宙空間で動作した実績である「フライトヘリテージ」が、顧客からの採用や海外展開において重要となる。しかし、軌道上実証の機会は限られ、機器の完成から打上げまでに数年を要する場合もある。AL Labが実証までの期間を短縮できれば、国内の衛星部品メーカーや宇宙スタートアップにとって重要なインフラとなる。
海外における衛星画像の販売体制も強化
アクセルスペースは、国内の政府系案件だけでなく、海外市場における衛星画像の販売体制も広げている。
2026年6月には、サウジアラビアの地理空間情報企業NSGと、衛星画像流通プラットフォームを運営するUP42とのパートナーシップを発表した。
これまでにも、韓国やオーストラリア、アフリカなどの企業・機関と連携し、衛星画像の販売や社会課題への活用を進めている。
防衛省案件によって国内の政府需要を取り込む一方、GRUS-3の観測能力を生かして海外や民間向けの販売をどこまで広げられるかも、中長期的な成長を左右する。
2031年5月期までに衛星30機体制を目指す
アクセルスペースは、中期的な成長に向け、2031年5月期末までに中分解能・高分解能衛星を合わせて約30機のコンステレーションを運用する計画である。
現在運用するGRUS-1シリーズに加え、2026年中の商用運用開始を目指すGRUS-3の7機、2028年5月期に打ち上げる高分解能衛星3機、2029年5月期に予定する高分解能衛星2機などを段階的に加える。
製造面では、今後5年間で40機以上を製造できる体制の構築を進める。衛星バスの標準化や共通設計の拡大によって、開発期間と製造コストを抑えながら、自社コンステレーションと顧客向け衛星の双方に対応する方針である。
さいごに
アクセルスペースホールディングスの2026年5月期は、AxelGlobe事業を中心に売上が拡大した一方、次世代衛星の開発や人員体制の強化により、先行投資が続く決算となった。
なかでも注目されるのが、防衛省の衛星コンステレーション事業をはじめとする大型案件の獲得である。AxelLinerでも政府系プロジェクトや軌道上実証サービスが進んでおり、両事業で将来の売上につながる案件が積み上がっている。
また、次世代地球観測衛星「GRUS-3」の7機打上げにより、AxelGlobeの観測体制も大きく強化された。商用運用が始まれば、撮影範囲や観測頻度が向上し、防衛、インフラ、農業、環境監視など、さまざまな分野での活用が期待される。
今後は、防衛省案件を安定して履行できるか、GRUS-3の商用運用を順調に開始できるか、そして事業拡大を収益性の改善につなげられるかなどが注目される。
アクセルスペースは現在、様々なポジションにて人材を募集している。興味のある方は、業界特化型の転職プラットフォーム「スぺジョブ」をチェックしていただきたい。

参考
株式会社アクセルスペースホールディングス「2026年5月期 通期決算補足説明資料」
株式会社アクセルスペース「次世代地球観測衛星『GRUS-3』クリティカル運用を正常に完了」
株式会社アクセルスペース「JAXAと軌道上実証サービス提供に関する契約を締結」
※本記事は、公開されている決算資料やIR情報をもとに、企業の事業動向を整理することを目的としたものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、投資助言を目的としたものでもございません。













