2024年7月30日、米大手宇宙企業2社が共同で設立したユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)は、国家安全保障ミッションとして「Atlas 5」ロケットの最終打ち上げを行う予定だ。
本記事では、「Atlas 5」の打ち上げ詳細と、後続の新型ロケット「Vulcan」について紹介する。
「Atlas 5」ロケットについて
前提知識
「Atlas 5」ロケットは、米大手Lockheed Martin社によって開発されたアメリカの基幹ロケットだ。
1990年代後半に始まったEvolved Expendable Launch Vehicle (EELV) プログラムの一環として、商業および軍事の打ち上げ市場向けに設計された。
2006年に、Boeing社とLockheed Martin社は、両社のロケット事業を統合してユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社を設立。設立後は、運用と製造をULA社が引き継ぎ、現在まで運用が継続されてきた。
2002年の初飛行以来、「Atlas 5」は多くの重要なミッションの成功に貢献してきたが、とりわけ国の基幹ロケットとして、米国空軍、宇宙軍、国家偵察局(NRO)など、政府機関のミッションへの功績が大きい。
今回の打ち上げは、次の新型ロケットに移行する前の最後の国家安全保障ミッションであり、「Atlas 5」にとって、1つの集大成とも言える打ち上げとなる。
打ち上げ詳細
今回の打ち上げは、ULA社にとって100回目の国家安全保障ミッションであり、「Atlas 5」ロケットとして53回目となる。
「Vulcan」ロケットについて
前提知識
「Vulcan」ロケットは、「Atlas 5」およびBoeing社が開発した「Delta IV」ロケットを置き換えるために設計された次世代型ロケットである。
2024年の1月8日に「Vulcan」ロケット初号機の打ち上げに成功しており、複数のペイロードを異なる軌道に届けることにも成功。既に複数の商業および政府のミッションとも契約を結んでいる。今年の9月には実験用ペイロードを搭載して、2回目の打ち上げを実施する予定だ(2024年7月28日現在)。
「Vulcan」のここがすごい
「Vulcan」ロケットは、「Atlas 5」や「Delta IV」と比較して、近年の複雑化されたミッションにも対応できるよう設計されている。推進システムの近代化やコスト効率の向上、ペイロード容量の拡大、運用の柔軟性とといった点で前機より優れており、次世代のミッション要件に対応する能力を持つロケットとして、注目されている。
さいごに
いかがでしたか。
この打ち上げ後も「Atlas 5」は引き続き、商業用ロケットとして運用が継続される予定だが、国家安全保障ミッションへの対応は、「Vulcan」ロケットが担うことになっている。
今回の「Atlas 5」の打ち上げは、ULAにとって一つの時代の終わりを意味しますが、同時に新しい時代の始まりでもある。次世代ロケット「Vulcan」のさらなる宇宙探査と防衛能力の貢献に期待だ。
参考
ULA prepares for final military launch of Atlas 5 rocket - SpaceNews
Atlas V USSF-51 (ulalaunch.com)
With ULA’s new rocket Vulcan behind schedule, Space Force agrees to let Atlas 5 fill in - SpaceNews