2024年8月25日、株式会社AstroXは、福島県南相馬市にて、超小型ハイブリッドロケットの発射実験に挑戦し、無事成功を収めた。本記事では、今回の発射実験の詳細並びに今後の展望について詳述している。
今回のロケット発射実験について
発射実験の概要
本発射実験では、福島県南相馬市内からAstroX社が設計製作した超小型ハイブリッドロケット(全長約1.8メートル)を使用。実機には、千葉工業大学の学生らが設計製作したものをベースに改良されたロケット「kogitsune」を用いて、実験を行った。
kogitsuneロケットの発射実験は、8月24日に予定されていたが、手順書に不明瞭な点が見つかったため、安全性を最優先に考え、打ち上げを中断。
手順書を明確化し、安全性が十分に確認されたうえで、翌日の25日に再度発射実験が行われた。その結果、kogitsuneロケットは無事に高度300mに到達し、成功を収めた。
前日の打ち上げ延期に際して、現場にも緊張感が漂っていたが、当日は、定刻通りに打ち上げが行われ、パラシュートの開傘や海水への着水まですべてが順調に進んだ。同社のCTOである和田豊千葉工大教授は、今回の打ち上げについて120%の成功であったと、和やかな雰囲気の中で語っていた。
同発射実験の目的と成果
2022年に創設された宇宙スタートアップのAstroX社は、日本の衛星打上げロケット不足に対応するため、民間企業として世界初のロックーン方式(気球による空中発射)のロケット開発に挑戦している。
これまで同社は空中発射による打ち上げ実験を中心に行ってきており、地上からの打ち上げ実験は今回が初めてであった。そのため、同実験では、地上からのロケット打ち上げに必要な手順の確認や技術ノウハウの確立を目的とし、社内教育の強化を図った。
また同社は福島県南相馬市に拠点を構えており、将来的には福島県に建設が予定されているスペースポートからのロケット打ち上げも視野に入れている。こうした背景から、今回の実験では福島県南相馬市から初のロケットを打ち上げ、地域住民との連携を深めつつ、貴重なデータを取得することも重要な目的であった。
今回の発射実験を通して、小型ロケットの開発に必要な技術の成熟と洋上からロケットを回収するノウハウの確立も同時に確認したとのことだ。
今回の発射実験の注目ポイント
ASTRO GATE社が打ち上げに協力
今回の発射実験にあたり、スペースポートの調査、企画、運営に取り組むASTRO GATE株式会社が全面的に協力。発射場所の選定や打ち上げ作業の支援だけに留まらず、ステークホルダーとの調整や住民説明会の開催まで、多岐にわたる包括的なサポートを実施した。
特に注目すべきは、民間のスペースポートオペレーターと民間ロケット会社が日本では初となるLaunch Service Agreement(LSA)を締結した打ち上げであるという点である。
今回の発射実験に際して、ASTRO GATE社CEOの大出大輔氏は、今後も世界中のロケット会社が、ロケット打ち上げに集中し、スムーズに実行できるよう、サービス体制を整えていくとコメント。また福島県の宇宙港としてのポテンシャルについても太平洋に開けて、晴天率が高く、風も穏やかで、非常に良い環境だと評価している。
*1 ロケット打ち上げサービスの提供に関する条件を定めたもので、政府機関が民間企業と結ぶ事例が多く、民間企業同士で結ぶことは稀である。
地元学生がロケット部品の製作に関与
kogitsuneロケットのエンジン部品の一部は、南相馬市に所在するテクノアカデミー浜の学生たちによって製作されたものであるとのことだ。AstroX社は、福島県をロケット製造および打ち上げの拠点とすることを目指しており、それに伴い、地域振興にも重きを置いている。そのため、今回のkogitsuneロケットは、将来の福島の産業を担う学生たちとの連携を通じて、一部製作が行われたことも注目すべきポイントだ。
打ち上げが成功した際には、製作に携わった地元の学生たちは喜びの表情を見せていた。
さいごに
いかがでしたか。
今回の打ち上げ成功に際し、AstroX社のCEOである小田翔武氏は、安堵の表情を浮かべ、昨日の打ち上げは中止に終わってしまったので、本日は見に来てくださった皆様の期待に応えたいとの思いで打ち上げに取り組んだとコメント。また、ロケット打ち上げにおいて地域住民との連携が必要不可欠であることを強調し、福島県と共に成長していく意志を表明した。
年内にはkogitsuneロケットより、3倍以上大きいFOXロケットを打ち上げる予定である同社。次のロケット打ち上げに向けて、良いスタートが切れたのではないだろうか。
参考: