
2025年9月、宇宙産業を題材に、様々な業界で活きる“実践的なスキル”を学ぶゼミ合宿「アストロキャンプ」が今年も開催される。
学生団体ASE-Lab.主催、4泊5日の合宿形式で行われるこのプログラムは、学年も専攻も異なる多様な学生が、宇宙業界の最前線で活躍する企業によるサポートのもと、“宇宙産業で求められる人材”へと成長するための特別な学びの場である。
文系・理系を問わず、専門知識がなくても熱量さえあれば参加可能。宇宙業界に限らず、ビジネスパーソンとしても大きく成長できる貴重な機会となっている。参加後には、学びへの達成感や、濃密な議論を交わした仲間との交流を通して、青春のような充実感も得られることだろう。
本記事では、「アストロキャンプ」の魅力を余すところなく紹介する。宇宙に関心のある学生はもちろん、情熱を行動に変えたいすべての学生にとって、新たな一歩となるはずだ。
目次
主催団体ASE-Lab.とは?
アストロキャンプを主催する「ASE-Lab.」は、宇宙業界に興味を持つ学生たちが自発的に集い、互いに学びを深める学習コミュニティである。
活動の中心はゼミ形式の勉強会や読書会であり、地域や文理・専攻を問わず400名以上の学生が所属している。
勉強会の内容は、宇宙理学や宇宙工学、その基礎となる数学や物理学に関するもの、更に教養を深める内容まで多岐に渡る。
アストロキャンプってどんなイベント?
ASE-Lab.では取り組みの一つとして、昨年度から宇宙事業を本気で学ぶ実践的プログラム「アストロキャンプ」を開催している。
同キャンプは、学生のうちから即戦力として活躍できる専門スキルや、分野横断的に宇宙を活用する実践的な力を養うカリキュラムを提供。
文系・理系を問わず、専門知識がなくても参加可能であり、将来的に宇宙に携わるかどうかに関わらず、「実践的な力を身につけたい」と考えるすべての学生にとって、大きな一歩となるプログラムだ。

学生生活では得られない!?企業が求める「実務力」を培う5日間
このイベント設立の背景には、主催団体ASE-Lab.代表を務める阿部 舞哉さんの経験がある。宇宙業界で活躍する企業4社でのインターンを経験する中で彼が強く感じたのは「学生が大学やサークルで学ぶ内容と、企業の現場で求められるスキルとの間にある大きなギャップ」であった。
近年、宇宙は国主導の研究開発の場から“産業”へと進化を遂げ、民間スタートアップの設立や異業種からの参入が加速している。宇宙を活用した新たなサービスやビジネスが次々と生まれている中、課題となっているのが現場で活躍できる実務人材の不足だ。
求められているのは、宇宙機を開発できるエンジニアや宇宙工学とビジネスをつなぐデータ活用エンジニア、ビジネス創出・拡大を担う人材など。しかし、こうした人材を育成する場は少なく、宇宙に強い関心を持つ学生の中でも、企業が求める“実務レベル”のスキルを備えた人材は多くない。
こうした課題に対し、「企業が求める実践的な力を、学生のうちに身につけられる場を提供したい」という想いで企画されたのが、アストロキャンプである。
このキャンプでは、開発・分析・事業戦略構築といったテーマを実務さながらの環境で学ぶことができる。参加者は自らの手で課題に取り組む中で、宇宙業界のみならず他分野でも活かせるスキルと自信を獲得し、次なるステップへの確かな足がかりを築いていく。
また、阿部さんが特に意識したのが、宇宙事業における“専攻外”の学生にとっての参加ハードルの高さの解消である。そのためこのキャンプでは、文系・理系を問わず誰もが挑戦できるよう、ゼミの設計にも工夫が施されている。
すでに衛星開発やデータ解析など専門的な内容に取り組んできた学生にとってはその知識をより実践的に深める場に。そして、自分なりのキャリアを模索している学生にとっては、宇宙というフィールドを通じて“実践する力”を養う絶好のチャンスとなっている。
興味に合わせて選べる3つのコース
アストロキャンプ2025では、宇宙産業を支える3つの分野:宇宙機開発、データ活用、ビジネス拡大から、以下の3つの専門ゼミが開講される。
- 衛星開発ゼミ
- 衛星データ解析ゼミ
- 宇宙事業分析ゼミ
参加者はこの3つのゼミから参加するコースを1つを選択することができる。各ゼミでは8週間にわたる事前学習を経てから4泊5日のキャンプ本番に臨む。キャンプの最終日には成果発表と交流会が開催される。
ここからは、それぞれのゼミの内容と魅力についてご説明しよう。

衛星開発ゼミ(協力:株式会社アークエッジ・スペース)
衛星開発ゼミでは、人工衛星をモデルとしたシステムのソフトウェアを少人数チームで開発。
サークル活動や大学での研究では得がたい、ハードウェアおよびソフトウェアの両面を横断的に理解しながら、故障等のトラブル対応を想定した実践的な開発に取り組むことができる。

開発スキルと同時に課題解決のプロセスを学べる点も、衛星開発ゼミの大きな魅力の一つである。
人工衛星の開発と聞くと専門性の高さゆえに参加のハードルが高い印象を受けるかもしれないが、このゼミは基礎的な内容から取り組む構成となっており、初心者の参加も歓迎されている。
このゼミで得た知識や思考法は、将来的にハードウェア設計やシステムエンジニアリング、トラブルシューティングの分野で広く応用できる。
ものづくりに関心のある学生にとって、貴重な学びの場となるだろう。
衛星データ解析ゼミ(協力:株式会社 sorano me)
衛星データ解析ゼミでは、与えられた3つの社会課題の中からチームで一つを選定し、そのテーマに即した衛星データの解析を実施。
解析の成果はキャンプ最終日に15分間のプレゼンテーションおよび質疑応答形式で発表し、順位付けも行われるほか、慶応義塾大学所属のシステムデザインの専門家である田中 康平 氏によるレビューや講演会も実施される。

このゼミの魅力は、形式や種類の異なる衛星データを複数扱い、それらを目的に合わせて適切に選択して解析するという、より実務に近いデータ解析スキルを身につけることができる点にある。
また、社会問題に取り組むという文脈から、自らの解析結果が社会に与える影響を理解し、それを第三者に分かりやすく伝える能力も養われる。
このゼミで培ったスキルは、将来のデータサイエンスや地理空間情報の分野、また公共政策の立案など、幅広い分野で活かされる。
プログラミングに関心のある学生や、衛星データの応用に興味を持つ学生にとって、非常に実践的かつ意義深いプログラムである。
宇宙事業分析ゼミ(協力:一般社団法人SPACETIDE)
宇宙事業分析ゼミでは、事前学習にて宇宙開発の歴史、市場構造、国内外の宇宙ベンチャーの現状、そして関係者からのヒアリング内容などを学習した上で、少人数のチームに分かれてプロジェクトに取り組んでいく。
具体的には、宇宙ビジネスにおける現場の課題検証、改善策の提案プレゼンテーション、特定企業の事業分析、さらには課題レポートの作成・発表までを行う。

このゼミの特徴は、短期的なアイデア勝負や表面的なプレゼン力に頼らず、深い考察と定量的・定性的な分析を通じて、本質的なビジネス思考を鍛える点にある。
宇宙ビジネスのみならず、あらゆる業界に応用可能で基礎的な経営感覚を身につけることができる。
このゼミで得た経験は、将来的に経営企画や新規事業開発、戦略立案などの分野で活かすことができ、文理問わず広いキャリアパスに繋がる有意義な学びとなるだろう。
参加者の声:インターンに繋がった例も!?
アストロキャンプは今年度が2回目の開催であり、初めて大々的に一般募集を開始している。初開催となった昨年度には、プレ開催としてASE-Lab.内部の学生を対象に4泊5日のキャンプが実施された。
以下に紹介するのはその際の参加者の声である。今年度のアストロキャンプの雰囲気や魅力を想像していただけると幸いだ。

これまで本当に何も知らなかったプログラミングの世界を、ROS2を通じて学ぶことができた。
参加したことで、今後さらに自動運転技術やプログラミングについて深く知っていきたいと感じたし、学んでいく際の心理的なハードルも下がったと思う。
参加者Aさん 自動運転ゼミの感想
今年度は自動運転に関するゼミの実施はないが、プログラミング初心者でも熱量さえあれば楽しめるという点では、衛星開発ゼミにも通じる部分があるだろう。
宇宙ビジネスについて、アウトプットする立場としてこれほど短期間に集中的に調べ、考えたのは初めてだった。
これまでは漠然と理解していた企業の規模や背景についても、詳しく把握・整理することができた。
ビジネスについて全く勉強したことがなかったが、この経験を通じて、「どのようにビジネスプランを磨いていくか」という問いに対して、自分の中に考えるための土台が生まれた。曖昧だったイメージが少し明確になったように感じている。
参加者Bさん 宇宙ビジネスゼミの感想
この内容に近いプログラムが、今年度開催される「宇宙事業分析ゼミ」である。ビジネスの基礎を、事前学習を含めた短期集中のインプット・アウトプットで深めることができる絶好の機会と言える。

キャンプ期間中は、朝から各チームが開発や議論に取り組み、ワークに非常に熱中できた。参加者の多くが、成長を実感する時間を過ごしていた。
このキャンプの醍醐味は参加者同士の交流にあると思う。開発チームの議論に対してビジネスチームが意見をするといった、ゼミを跨いだ交流・議論が生まれてくるというのが非常に良かった。何かしらに高いモチベーションを持つ学生たちと触れ合うことによって自身の熱量も上がっていく感覚があった。
これらの経験を通して熱く語り合ったかけがえのない仲間となり、夜は一部屋に集まって映画を見たり、外食に出かけたり、キャンプ後も関係を続け食事に出かけるような関係性を築ける、そんな”仲間探しの場”としても非常に有意義だった。
参加者Cさん 全体を通しての感想
このように、アストロキャンプは熱い想いを持つ学生同士が出会い、共に成長できる場でもある。
宇宙を目指す同志と長期的なつながりが築けるのは同キャンプの大きな魅力。将来キャリアに迷ったときや新たな挑戦を考えるとき、ここで出会った信頼できる仲間と情報交換し、視野を広げる機会が得られるのだ。
宇宙業界で働きたいという想いはあったものの、どこから情報を得てよいのか分からず、動き出せずにいました。
でもこのキャンプで、実際に現場で働いている企業の方と話し、仕事内容やキャリアについてリアルな話を聞けたことで、将来の選択肢が一気に広がりました。
その場でインターンの案内をいただき、後日面談を経て参加が決まりました。あの一歩がなければ、今の自分はいなかったと思います。
参加者Dさん 採用交流イベントの感想
このキャンプでは、企業との採用・インターンを目的とした交流イベントも実施されており、実際に宇宙企業でのインターンの機会を得た参加者もいる。
初心者でも挑戦でき、ビジネスセンスも磨け、仲間と出会える——まさに、キャリアの第一歩を踏み出すための絶好の環境である。
イベント情報・お問い合わせ
イベント概要・お申込み
イベント概要は以下の通り。
- 日時:2025年9月8日(月)〜9月12日(金) ※参加者はキャンプ前に2か月間の事前研修をオンラインで実施
- 場所:国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)
- 参加資格:高等専門学校・大学・大学院前期課程に在学する満18〜24歳の学生
- 主催:ASE-Lab.
- 参加費:15,000円(宿泊費・食事・施設利用費)
アストロキャンプのお申込みはこちらから。期限が2025年5月31日までとなっているのでご注意いただきたい。
説明会について
アストロキャンプに興味を持っているが、準備物がわからない方や、どんなゼミなのか詳細を聞きたい方には各ゼミごとに開催される説明会への参加がおすすめだ。
なお、開催日が迫っているため、お早めにご確認いただきたい。
- 衛星データ解析ゼミ(5月19日)
- 衛星開発ゼミ(5月24日)
- 関係企業・キャリア形成説明(5月26日)
- ラストコール!駆け込みQ&A(5月31日)
お問い合わせ先
アストロキャンプ2025ついての問い合わせはこちらのフォームから
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さいごに
いかがでしたか。
アストロキャンプは、宇宙を目指す学生のための“特別な学びの環境”である。しかし、ここで学ぶ内容は決して宇宙だけに閉じたものではない。課題解決力、論理的思考力、実行力、そして人とのつながり。これらはあらゆる分野で求められる力だ。
宇宙を専門とする学生にとどまらず、宇宙に興味のある学生に是非参加してもらいたい。
このイベントを「人生を変えるきっかけ」にしてみてはいかがだろうか。
また、主催団体ASE-Lab.では、新規メンバーも随時募集している。Googleフォームからの登録とSlackへの参加のみで、お気軽にご参加いただける。
こちらもチェックしていただきたい。
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参考