有人月飛行ミッション「アルテミスⅡ」、2026年2月から4月に打上げへ

NASAが進める月探査計画「アルテミス計画」は、人類を再び月へ送り出すことを目指す国際的な取り組みである。その中で、次に予定されている重要なミッションが、2026年2月から4月に打ち上げが計画されているアルテミス IIである。

本記事では、アルテミス計画の全体像を整理したうえで、アルテミスⅡがどのような役割を担うミッションなのかを解説。あわせて、一般の人も参加できる企画「Send Your Name with Artemis II」についても紹介する。

アルテミス計画とアルテミスⅡ

アルテミス計画とは

アルテミス計画は、NASAが主導する国際的な月探査プログラムである。人類を再び月へ送り、将来的な月面活動やその先の探査につなげることを目的としている。1960〜70年代のアポロ計画以来、はじめて人類を月に送ることを目指している。

日本も本プログラムに参画しており、日本人宇宙飛行士2名の月面着陸と、JAXAやトヨタなどが開発する与圧式月面探査車(ルナ・クルーザー)の提供等が合意されている。

無人飛行から有人飛行、さらに月面着陸へと、複数のミッションを段階的に積み重ねる形で進められており、最初のミッションとして2022年にアルテミスⅠが実施された

アルテミスⅠでは、宇宙飛行士は搭乗せず、無人のオリオン宇宙船が月の周辺を飛行し、地球へ帰還。宇宙船やロケット、通信や航法、再突入といった基本的なシステムが、深宇宙環境で問題なく機能するかが確認された。また、複数の超小型衛星や探査機も搭載され、日本のOMOTENASHIとEQUULEUSもアルテミスIにより宇宙に向かった。

アルテミスIIについて

アルテミスⅡは、アルテミス計画における初の有人ミッションにあたり、複数の打ち上げ候補日が設定されている。

NASAによると、これは月と地球の位置関係や飛行軌道の条件によるもので、オリオン宇宙船が月の近傍を通過し、安全に地球へ帰還できる軌道を確保できる日が限られているためだ。その結果、打ち上げ機会は月ごとに数日間程度に絞られている。

ミッションでは、宇宙飛行士4名が搭乗するオリオン宇宙船が約10日間にわたり月の近傍を飛行し、その後地球へ帰還する計画となっている。月面着陸は行わず、深宇宙環境下における生命維持、通信、航法、再突入といった運用を、有人状態で確認することが主な目的だ。

アポロ計画以来、約半世紀ぶりとなる月への有人飛行として、アルテミスIIは、アルテミス計画を次の段階へ進めるための重要な位置づけを担うミッションとされている。

NASAのアルテミスII宇宙発射システム(SLS)ロケットとオリオン宇宙船を固定した移動式発射台
NASAのアルテミスII宇宙発射システム(SLS)ロケットとオリオン宇宙船を固定した移動式発射台 ©NASA

打ち上げ日と打ち上げ後のスケジュール

打ち上げ日について

NASAは、ケネディ宇宙センターで実施された「ウェット・ドレス・リハーサル(打ち上げ直前リハーサル)」の結果を受け、最短で2026年2月に予定していた打ち上げ日を3月6日以降に変更すると発表した。(※2/19時点)

今回のリハーサルでは、SLSロケットへの極低温燃料の充填には成功したものの、カウントダウン中に複数の技術的課題が浮き彫りとなった。最も大きな要因は、ロケットのコアステージへ燃料を送るインターフェース部で発生した液体水素の漏洩である。漏れ率の急上昇により、打ち上げ5分前の段階で自動停止を余儀なくされた。

このほか、最近交換されたばかりのオリオン宇宙船ハッチ加圧バルブの再調整が必要になったことや、地上チーム間の音声通信チャンネルで発生した一時的な切断トラブルなども報告されている。

NASAはこれらのデータを詳細に分析し、各問題に対処した上で、2回目のリハーサルを実施する方針だ。

この延期に伴い、1月21日から隔離生活に入っていた4名の宇宙飛行士は一旦隔離を解除され、次回の打ち上げウィンドウの約2週間前から再び隔離体制に入る予定である。

打ち上げ後のスケジュール

アルテミスIIの飛行ルートのを表した図
アルテミスIIの飛行ルートの概念図©NASA

SLSロケットによる打ち上げから、人類を再び月圏へと送り、地球へ帰還させるまでのアルテミスIIミッションの行程について概説する。

1.打ち上げから地球周回軌道へ

上昇と分離: SLSロケットが約880万ポンドの推力で上昇。大気圏脱出後、ブースター、フェアリング、緊急脱出システムを順次切り離し、コアステージのエンジン停止後にオリオン宇宙船が分離される。

軌道投入:上段ロケット(ICPS)の噴射により、高度160kmの安定した低軌道に投入される。

2.高軌道での動作実証

高軌道(HEO)への遷移:ICPSが再度噴射し、オリオン宇宙船を地球から離れた高い楕円軌道へ投入。ここで約23時間にわたり、宇宙飛行士による機体チェックが行われる。

運用実証:ICPSから分離後、乗組員は手動操縦でICPSに接近・周囲を飛行するテストを実施。これからのドッキングに必要な操縦技術を検証する。

3.月への往路

月遷移軌道投入(TLI): ミッション最後の大規模なエンジン噴射を行い、月へ向かう「自由帰還軌道」に乗る。

月圏突入:打ち上げから5日目、地球よりも月の重力の影響が強くなる月の重力圏に入る。3回の微細な軌道修正を行いながら月を目指す。

4. 月フライバイ(月近傍通過)

月の裏側飛行: 飛行6日目、宇宙船は月に再接近する。その距離は月面から約6400km〜1万km。月の裏側を飛行する際、地上との通信が30〜50分間遮断され、その間、乗組員は科学観測や写真撮影を行う。

5. 地球への帰還

自由帰還軌道による航行:月の重力を利用して自然に地球へ引き返す。帰還中も正確な着水スポットを目指して3回の軌道修正を行う。

再突入の準備: 帰還直前、エンジンを備えたサービスモジュールを切り離し、乗組員が乗るクルーモジュールの耐熱シールドを露出させる。

6. 大気圏再突入と着水

過酷な再突入:高度約122kmで大気圏に接触。時速数万キロの摩擦により約3000度の高温とプラズマが発生し、一時的に通信が途絶える。

パラシュート展開と着水:順次パラシュートを展開し、約27km/hまで減速して太平洋に着水する。着水後は浮き袋により機体を直立させ、乗組員の回収を待つ。

誰でも名前を搭載可能!参加型企画に注目

「Send Your Name with Artemis II」について

アルテミスⅡでは、一般の方の名前を宇宙船に搭載する参加型キャンペーン「Send Your Name with Artemis II」も開催されている。

専用サイトから登録された名前は、デジタルデータとしてオリオン宇宙船に搭載され、月近傍を飛行する。

参加者は無料で参加でき、記念の搭乗券(ボーディングパス)も発行される。有人月ミッションを身近に感じられる仕組みとなっており、NASAは本企画を通じ、次世代に向けた宇宙探査への関心喚起と国際的な支持の拡大を狙う。

キャンペーンの参加方法

本キャンペーンは、日本からでも手軽に参加することができる。ここからは、その参加方法について紹介する。

  1. NASA公式ページ
  2. 公式ページで名前を登録し搭乗券を発行
  3. オリオン宇宙船に搭載
  4. ミッション終了後も記録として保存される

手順1. NASA公式ページ

参加希望者は、NASAが運営する「Send Your Name with Artemis II」の公式ページにアクセスする。特別な条件や事前登録は不要で、インターネット環境があれば世界中から参加可能となっている。

手順2. 公式ページで名前を登録し搭乗券を発行

参加希望者は氏名などの必要事項を入力。全ての項目を埋め終え、”SUBMIT”ボタンをクリックする。登録が完了すると、デジタル搭乗券が発行される。

「Send Your Name with Artemis II」デジタル搭乗券
「Send Your Name with Artemis II」デジタル搭乗券©NASA

手順3. オリオン宇宙船に搭載

登録された名前は、専用のデジタルデータとして集約され、アルテミスⅡミッションで使用されるオリオン宇宙船に搭載される。

宇宙船は地球を出発後、月周辺を飛行して地球へ帰還する予定であり、参加者の名前は有人月ミッションの一部として、宇宙を巡る。

手順4. ミッション終了後も記録として保存される

アルテミスⅡミッション終了後も、登録された名前とPIN情報はNASAの公式データとして保存される。

これらは有人月ミッションの参加記録の一部として扱われ、参加者はデジタル搭乗券とともに、人類の深宇宙探査史に象徴的に関わった証を長期的に残すことができる。

さいごに

アルテミスⅡは、人類の月・深宇宙探査を再始動させるための重要な節目となる有人月ミッションである。

また、「Send Your Name with Artemis II」は、こうしたミッションをより身近に感じられる機会の一つだ。宇宙開発はかつては国家主導で進められていたが、近年では民主化が進み、様々な宇宙関連事業が生まれている。

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参考

Final Steps Underway for NASA’s First Crewed Artemis Moon Mission(NASA, 2026-01-20閲覧)

ARTEMISⅡ Send your name around the Moon!(NASA, 2026-01-20閲覧)

ARTEMIS Ⅱ Press Kit(NASA,2026-02-18閲覧)

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