アストロスケールのADRAS-Jが運用終了|世界初のデブリ接近実証
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2026年3月25日、株式会社アストロスケールホールディングス(以下、アストロスケール)は、軌道上サービス実証ミッション「ADRAS-J」の運用終了と軌道降下の開始を発表した。

本記事では、ADRAS-Jミッションの概要と主な成果、そして今後の軌道上サービスの展開について整理する。

ADRAS-Jの運用終了について

概要

ADRAS-Jは、計画されていたミッションを完了したことを受け、運用を終了し軌道降下フェーズへ移行した。今後は高度を段階的に下げ、5年以内には大気圏へ再突入し消滅する見込となっている。

本ミッションでは、運用終了後の処理まで含めて設計されており、自律的な軌道離脱を行うことで、新たなスペースデブリを発生させない運用が採用されている。これは、近年重要性が高まる「宇宙活動の持続可能性(サステナビリティ)」に配慮した運用といえる。

ミッションの位置付け

本ミッションは、JAXAの商業デブリ除去実証プログラム(CRD2フェーズI)の一環として実施された。

宇宙デブリ除去は、「接近」「把持」「除去」という複数の工程で構成されるが、その中でも最初の「接近」は技術的ハードルが高いうえ、後続の工程を左右する重要な段階である。対象となるデブリは制御不能かつ形状や回転状態が不明な場合が多く、事前情報が限られる中で安全に距離を詰める必要があるためである。

ADRAS-Jは、この「非協力物体への接近・観測」という基礎工程に特化したミッションとして設計されており、将来的なデブリ除去サービスの実現に向けた“前段階の実証”という位置付けを持っている。

アストロスケール ASRAS-J
©アストロスケールのリリースより引用

世界初のデブリ接近ミッションの成果

RPO技術の確立

ADRAS-Jは、回転し制御不能なデブリに対して安全に接近するランデブ・近傍運用(RPO)技術を実証した。

ミッションでは、対象デブリに対して約50mの距離で周回観測を実施し、最終的には、約15mにまで接近することに成功。

通信不能であり、質量特性や回転状態も不確実である場合が多い非協力物体に対し、相対航法センサーや画像認識技術を活用して対象物の位置や姿勢をリアルタイムで推定し、安定した近傍飛行を実現した。

段階的に距離を詰め、衝突リスクが生じる場合には回避する、安全な誘導・制御技術を軌道上で示した点は、大きな成果といえる。将来的な捕獲や除去を見据えた近傍運用の実現に向けた、大きな前進である。

観測データの価値

今回取得されたデータは、将来的なデブリ捕獲ミッションの重要な基礎情報となる。

特に、捕獲対象となる部位(PAF)の状態把握や、物体の回転挙動、表面形状に関する実データは、今後のミッション設計において不可欠な要素と考えられる。

従来は地上からの観測に依存していたため、詳細な形状や動的特性の把握には限界があったが、今回のミッションにより、実際の軌道上環境における高精度データの取得が可能となった。

アストロスケール ADRAS-J 地球と一緒に撮影したデブリ(左)と周回観測時に撮影したデブリ(右)
地球と一緒に撮影したデブリ(左)と周回観測時に撮影したデブリ(右) ©アストロスケールのリリースより引用

次のミッション「ADRAS-J2」の展開

アストロスケールは、次段階として「ADRAS-J2」ミッションを計画しており、2027年度の打上げを予定している。

ADRAS-Jが「観測・接近」に重点を置いたのに対し、ADRAS-J2では実際のデブリ捕獲および除去の実証が予定されている。これは、軌道上での近傍運用から一歩進み、対象物への物理的な介入を伴うミッションへと移行する。

今回のADRAS-Jで得られた観測データや運用知見は、ADRAS-J2の設計や運用計画に反映されると考えられ、技術的な連続性を持った開発が進められている。

さいごに

ADRAS-Jは、世界で初めて実デブリへの接近・観測を成功させたミッションとして、軌道上サービスの実現に向けた基盤技術の確立に貢献し、デブリ除去は実用化に向けた段階を一歩進めた。

一方で、商業化に向けてはコスト構造や制度設計、持続的な需要の確立といった課題も残されているだろう。今後のADRAS-J2の進展は、こうした課題を乗り越え、宇宙空間の持続可能性を確保する上で重要な試金石となる可能性がある。

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参考

宇宙ごみへの接近・撮影に成功し日本から世界初を成し遂げた人工衛星、運用終了へ(2026-03-26閲覧)

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