2023年3月30日、宇宙ゴミ問題に取り組む株式会社アストロスケールが、スペースデブリ調査衛星『ADRAS-J』のミッションの紹介動画を公開した。
この動画では、世界初となる今回のミッションがどのように行われるのかについて、説明されている。
本記事では、動画で紹介されているこの歴史的なミッションの詳細について解説する。
▽ADRAS-J紹介動画
アストロスケールが取り組むスペースデブリ対策事業
アストロスケールは、世界で初めて、安全な宇宙環境の確保に向けたスペースデブリ対策事業に専業する企業。
その事業は多岐に渡り、以下のようなサービスを実現することを目指している。
- 衛星のデブリ化防止
- 既存デブリの除去
- 寿命延長
- 故障器や物体の観測・点検
今回は、その中の「既存デブリの除去」に関するミッション。
既に宇宙空間に存在するスペースデブリ、例えば、ロケットの上段や、軌道上にある機能しなくなった衛星に接近し、捕獲・除去を行う事業だ。
2023年に行われる世界初のミッションとは
今回のミッションは、「既存デブリの除去」事業におけるフェーズⅠとして宇宙に漂うデブリの調査を行う。
長期にわたり放置されたデブリに安全に近づいて捕獲するためには、その前にデブリの運動の様子や損傷・劣化状況を調べるということが重要となる。
しかしこれはまだ成功事例がなく、今回はその初実証に伴い、アストロスケールとJAXAが連携し、衛星「ADRAS-J」を開発した。
ADRAS-Jを用いたミッションは、デブリとなって、宇宙を放浪している日本のロケット上段へ接近し、撮影、その状況を明確に調査。
すなわち、既存デブリ除去事業における、捕獲・除去以外の全ての段階を実証することを目指している。
また、この実証は、2021年11月に日本政府が公表した、軌道上サービスを行う人工衛星の、緊急時の対応や禁止事項等について定めたガイドライン[*1]に基づいて行われる。
そうすることで、アストロスケールは、国の規制の在り方についても世界に先駆けて示す狙いだ。
打ち上げは2023年度に、Rocket Lab社のロケット「Electron(エレクトロン)」によって打ち上げられる予定である。
最初のミッションが終わった後は
デブリに無事接近し、その状況を調査するフェーズⅠに成功した場合、次はフェーズⅡ、デブリの捕獲・除去である。
アストロスケールは、デブリの捕獲と、軌道離脱まで行うミッションのパートナーとして、英国宇宙庁(UKSA)と既に契約を結んでいる。
英国を拠点とする10社の企業と協力して開発し、英国のデブリ衛星2機を2026年までに除去する予定だ。
参考
アストロスケール、世界で初めてデブリの状況を明確に調査するADRAS-Jミッションの紹介動画を公開