
2026年2月20日、防衛省は、「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」における事業契約の内容を公表した。
本事業に選定されたのは、株式会社トライサット・コンステレーション(以下、トライサット)である。同社は、三菱電機株式会社、スカパーJSAT株式会社、三井物産株式会社により設立された特別目的会社で、防衛省とは2026年2月19日に契約を締結している。
本記事では、事業の制度設計と契約内容について整理する。
目次
事業概要
安全保障強化に向けた体制整備
防衛省の「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」は、日本に侵攻する部隊をその脅威圏外となる離れた位置から対処し、攻撃を阻止する『スタンド・オフ防衛能力』の実効性確保に必要な画像情報を、安定して取得できる体制の整備を目的とする。
選定事業者が担う主な業務は以下の3つ。
- 衛星画像データの取得に関する業務
- 専用地上施設の運用等に関する業務
- 全般的な管理に必要な業務
背景には、日本周辺で軍事活動が活発化する中、隙のない情報収集体制を構築する必要性が高まっていることがある。複数の手段を組み合わせ、必要な情報を安定して取得できる体制を整えることが不可欠となっている。
しかし、従来の商用衛星画像を活用する場合、防衛省が求める頻度や優先度での撮像が常に確保されるわけではない。状況によっては撮像制限が生じる可能性もあり、必要なタイミングで画像を取得できないリスクがある。
こうした課題を踏まえ、本事業では、防衛省が撮像の優先権を持つ、防衛省の用途に必要な機能等を備えた衛星コンステレーションを整備。これにより、必要なタイミングでの画像取得につなげる考えだ。
民間資金を活用する理由とは
本事業では、PFI手法(民間資金を活用する方式)で実施される。事業者側が自らの資金で衛星コンステレーションと専用の地上施設を整備し、事業期間中は事業者が保有・運用するBOO方式(整備・保有・運用)が採用される。事業終了後も、防衛省に譲渡しない方式である。
防衛省は、民間が保有・運用する形を取ることで、衛星の製造・打上げ・運用、地上側設備の整備などで民間のノウハウや既存資産を活用しつつ、防衛省の使用以外の機会には民間需要に画像を販売できる余地を残す。これにより、事業費の抑制につなげることができるのだ。

契約内容について

トライサットが契約金額2,831億円で受注
本事業は、三菱電機・スカパーJSAT・三井物産により設立された特別目的会社である、トライサットを中心に実施される。防衛省とトライサットとの契約金額は、約2,831億円となっている。
事業期間は2031年3月末までの約5年間。2026年4月1日から2028年3月30日までは段階的に衛星コンステレーションを整備して運用する『段階的運用期間』、2028年3月31日から2031年3月31日までは本事業衛星によるコンステレーションを所要の衛星機数によって整備し運用する『本格的運用期間』となる。
国産衛星の開発企業にデータ取得業務を委託
本事業には、トライサットの出資会社3社のほか、株式会社Synspective、株式会社QPS研究所、株式会社アクセルスペース、三井物産エアロスペース株式会社が協力企業として参画。
協力企業とは、以下のように衛星画像データの取得に関する業務委託契約が締結されている。

特別目的会社を設けるメリット
本事業の実施方針では、落札者が本事業の遂行のみを目的とした株式会社を設立することを基本としている。
防衛省側の視点で重要なのは、責任主体の明確化である。衛星の整備・運用から地上施設の構築までを含む本事業では、複数企業が関与する場合でも契約相手を一法人に集約することで、履行責任やリスクの所在を明確にできる。財務や業務状況を一体で監視できる点も重要だ。
また、また、事業者が衛星や地上施設を保有する方式を採るため、特別目的会社を通じて事業を切り分けることで、収支構造が明確になり、支払いの妥当性も検証しやすくなる。
一方、受注側にとっても、事業専用の法人を設けることで本事業に伴うリスクを他事業から分離でき、資金調達や役割分担の整理も行いやすい。
このように、特別目的会社の設立は、防衛省にとっては管理の明確化、受注側にとってはリスクと資金の整理という意味を持つ。長期かつ複雑な宇宙事業を安定的に運営するための制度設計といえる。
さいごに
防衛省の「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」では、防衛省が撮像の優先権を確保し、民間の技術と資金を活用しながら、防衛用途に特化した情報取得基盤を構築する点に特徴がある。
特別目的会社の設立や、事業者が衛星を保有・運用する方式の採用は、長期・高額・複数主体が関与する宇宙事業を安定的に進めるための制度設計といえる。
今後は、段階的運用期間を経て、所要機数による本格運用に移行する。その過程で、民間衛星事業者との役割分担や画像提供体制がどのように具体化していくのかが注目される。
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参考
衛星コンステレーションの整備・運営等事業(防衛省, 2026-02-24閲覧)
(開示事項の経過)防衛省「衛星コンステレーションの整備・運営等(QPS研究所, 2026-02-24閲覧)
アクセルスペース、防衛省の「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」を受注(アクセルスペース, 2026-02-24)
防衛省「衛星コンステレーション整備・運営等事業」における特別目的会社設立および契約締結に関するお知らせ(Synspective, 2026-02-24閲覧)








