SpaceBlast、軌道上データセンター構築技術で宇宙戦略基金に採択
©Space Connect

株式会社SpaceBlast(英:SpaceBlast, Inc. 、以下SpaceBlast)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運営する宇宙戦略基金において、「軌道上データセンター構築技術」を技術開発テーマとした事業の実施機関として採択された。

本事業では、衛星データを地上に降ろして処理する従来型モデルから脱却し、宇宙空間そのものをデータ処理基盤として活用することを目指す。

本記事では、SpaceBlastが採択された内容や軌道上データセンターについて解説する。

SpaceBlastについて

SpaceBlastは2023年設立のスタートアップで、宇宙領域およびデジタル領域における技術開発事業・コンサルティング事業・メディア事業を手掛けている。

宇宙技術とコンサルティング、メディアを組み合わせた多面的な価値提供を特徴としており、宇宙環境利用に向けたペイロード開発や利用推進、月面ローバーに関する開発支援、さらに宇宙・地上データを融合したイノベーション支援など、幅広い分野で事業を展開している。

※2025年7月に株式会社DigitalBlast Consultingから社名変更

本宇宙戦略基金事業の内容と意義

技術テーマ概要

今回SpaceBlastは、宇宙戦略基金事業における技術テーマ「軌道上データセンター構築技術」において、「高信頼性エッジコンピューティングによる軌道上データセンターの構築」という技術開発課題で採択された。

軌道上データセンターとは、衛星や宇宙ステーション上で生成されるデータを軌道上で処理・中継するための拠点を指す。本事業では、地球低軌道上にデータ処理・通信のハブとなる拠点を構築し、データを地上に送信する前段階で効率的に処理できる基盤の実現を目指す。

本事業は実証を前提としたフェーズに位置づけられており、将来的な商業化を見据えた技術成熟が狙いとされている。

SpaceBlastが軌道上データセンター構築技術で宇宙戦略基金に採択されたことを表す図
SpaceBlastが軌道上データセンター構築技術で宇宙戦略基金に採択(PR TIMES プレスリリースより引用)

軌道上データセンターの意義

軌道上データセンターは、近年注目を集める概念であり、その意義は従来の衛星データ処理モデルと、ポストISS時代を見据えた宇宙利用の変化を踏まえることで、より明確になる。

従来モデルの限界とポストISS時代に顕在化する課題

従来の衛星運用では、取得した観測データを地上局へ送信し、地上側で蓄積・解析する方式が一般的であった。

しかし、近年では衛星の高性能化やコンステレーション化によりデータ量は爆発的に増大している。その一方で、地球低軌道衛星は地上局との可視時間が限られており、1回あたりの通信機会では数分から十数分程度しか通信できないという構造的な制約を抱えている。

その結果、通信帯域の制約やダウンリンク待ちによる遅延が顕在化し、特にリアルタイム性が求められる用途では、地上依存型の運用がボトルネックとなりつつある。

こうした課題は、2030年頃に予定されている国際宇宙ステーション(ISS)の運用終了後を見据えたポストISS時代において、より顕在化すると考えられる。

ポストISS時代では地球低軌道の有人拠点運用が政府主導から民間主導に移行し、地球低軌道利用サービスも拡大していくと考えられる。それに伴い、軌道上で生成・扱われるデータ量は大幅に増加するとともに、データの高頻度・高即時性での活用や、用途に応じた選別・加工といった、より高度な利活用が求められるようになる。

宇宙空間で「処理する」インフラという発想

このような環境下では、取得したデータをすべて地上へ送信する従来型の運用ではなく、軌道上でデータを処理し、その結果のみを地上へ送信するという新たなデータ処理基盤の確立が、安定的かつ効率的な宇宙利用の観点から不可欠となる。

軌道上データセンターは、データを地上に送信する前に宇宙空間で処理するという考え方に基づくものであり、地上の情報処理分野で普及してきたエッジコンピューティングの概念を宇宙に適用したものと位置づけられる。必要な情報のみを選別して送信することで、通信効率の向上と即時性の確保を図る

この構想は、衛星を単体の装置としてではなく、相互に連携するネットワーク型インフラの一部として再定義する試みとも言える。将来的には、こうした技術を月面における集中的なデータ処理へ応用することで、月面活動の高度化や運用効率の向上につながる可能性も示されている。

さいごに

今回の宇宙戦略基金での採択は、SpaceBlastが提案する軌道上データセンター構想が、ポストISS時代における宇宙利用の方向性と合致するものとして位置づけられたことを示している。

地球低軌道利用の拡大に伴い、軌道上で生成されるデータ量は今後さらに増加し、即時性や効率性を重視した新たなデータ処理基盤が不可欠となる。

本事業は実証を前提としたフェーズに位置づけられており、今後は技術的な成立性だけでなく、商業宇宙ステーションや将来の月面活動といった具体的な利用シーンとの接続が焦点となる。軌道上データセンターが、次世代の宇宙インフラとしてどのように実装されていくのか。今後の動向に注目だ。

また、宇宙戦略基金に関する過去の解説記事も、あわせてご参照いただきたい。

参考

PR TIMES,『SpaceBlastがJAXA宇宙戦略基金「軌道上データセンター構築技術」の実施機関に採択されました』

JAXA,『軌道上データセンター構築技術』

株式会社SpaceBlast HP

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