2025年1月13日に予定されていた、アメリカの宇宙企業であるBlue Originが開発した新型の巨大ロケット「New Glenn(ニューグレン)」の初打ち上げが延期された(2025/1/13 17:30)。
本記事では、「New Glenn」の概要および、初打ち上げの予定と搭載衛星についてご紹介する。
「New Glenn」とは
「New Glenn」の概要は以下の通り。
まず、全長は98m以上。世界最大の「Starship」(121m)よりは小さいものの、日本の大型ロケットである「H3」(63m)や、SpaceXの超巨大ロケット「Falcon Heavy」(70m)よりも大きい。
衛星などのペイロード(貨物)を入れるフェアリングは7mあり、従来の5mクラスのフェアリングのおよそ2倍の容積を持つ。
ロケットの性能としては、低軌道から静止軌道(約36,000㎞)にペイロードを送るための静止トランスファー軌道(GTO)に13t、高度2,000㎞以下の低軌道(LEO)に45t以上の貨物を運ぶことが可能だ。また、ミッションに応じてロケットの段数を2段または3段に調整でき、様々なペイロードと目的地に対応できる。
次に、第一段エンジンには、同社が開発するBE-4エンジン7機が使用されている。BE-4は燃料に液化天然ガス、酸化剤に液体酸素を使用するエンジンで、海面で2450kNの推力を生成。2024年1月に初打ち上げに成功したULAの新型ロケット「Vulcan」にも使用されている。
また、第一段全体は再利用可能な設計で、最低でも25回打ち上げられる想定だ。
第二段エンジンには、同社の有人宇宙船「New Shepard(ニューシェパード)」等で運用実績のあるBE-3シリーズの新型エンジン、BE-3Uが2基搭載されている。
BE-3Uの真空推力は712kNで、ミッション実施中の再燃焼も可能となっている。
初回ミッションの概要と今後の予定
ミッション内容
「New Glenn」の最初のミッション(NG-1)では、国防イノベーションユニット(DIU)のプロジェクトの一環として、Blue Originが開発した「Blue Ring Pathfinder」が搭載される。
DIUはアメリカ国防総省に属する組織で、商業技術を軍事用途に活用することを目的としている組織である。
「Blue Ring Pathfinder」は異なる軌道間の移動が可能な宇宙モビリティプラットフォームであり、1つ以上のペイロード(最大2.5t)を搭載し、それぞれをGEO(静止軌道)、シスルナ(地球と月の間の軌道)、および惑星間空間など、各々の目的地に輸送することが可能。
「New Glenn」における宇宙実証では、通信機能など運用システムや、追跡等の地上システム、宇宙空間での飛行能力等がテストされる予定だ。
初打ち上げの予定
Blue Originは当初、初打ち上げを1月10日に打ち上げる予定であったが、天候上の理由により13日に延期していた。
13日は15時に打ち上げ予定であったが、数回打ち上げ時間を変更し、最終的に17時10分ごろに打ち上げの再延期を発表。
原因についてはロケットサブシステムのトラブル対応としており、延期後の打ち上げ予定は検討中としている(2025/1/13 17:30)。
さいごに
いかがでしたか。
ロケットの開発は、技術的に非常に高度な挑戦が求められ、特に新型ロケットの初号機の打ち上げでは、さまざまな課題が発生することがある。しかし、それを乗り越えることで、新たな宇宙利用の可能性が広がるだろう。
Blue Originの「New Glenn」は、次世代の宇宙輸送を担う、注目の大型ロケットだ。同ロケットの次なる挑戦がどのような成果を生むのか、これからの展開に引き続き注目だ。
参考
- Blue Ring Pathfinder Payload Ready for Launch; Blue Origin’s New Glenn on Track for This Year
- New Glenn NG-1 Mission Updates
- The Foundation for a New Era
- Companies Selected for DIU Orbital Logistics Vehicle Project Moving Forward with Prototypes
- Rocket Engines Designed for Reuse
- Powering the Upper Stage of New Glenn