NEC、日本初の光通信衛星コンステレーションに向けた実証衛星を2027年に打上げへ

2026年3月19日、日本電気株式会社(以下、NEC)は光通信衛星コンステレーションの実現に向けた技術実証衛星について、搭載機器(ペイロード)の設計を完了したと発表した。

本記事では、NECの取り組みの概要と技術的ポイントを解説する。

NECが実証する「次世代宇宙通信技術」の概要

技術実証衛星の基本情報

NECが開発を進める技術実証衛星は、日本初の光通信衛星コンステレーションの実現に向けたものである。

同社は現在、搭載機器(ペイロード)の設計を完了しており、今後はこれを製造したうえで、衛星の共通機能を担う衛星バスに組み込む。2027年度の打上げを予定しており、軌道上で各種通信技術の実証を行う計画である。

衛星バスには、米Apex Technology社の「Aries」が採用される。Ariesはすでに宇宙空間での運用実績を持つほか、量産化によって在庫を確保できる体制が整っている。このように、既存の衛星バスに自社開発のミッション機器(ペイロード)を搭載することで、開発期間の短縮とリスクの低減が期待される。

光通信衛星コンステレーションのイメージ
光通信衛星コンステレーションのイメージ ©NEC

実証対象となる主要技術

本実証では、光通信衛星コンステレーションの実現に不可欠な複数のコア技術が統合的に検証される。NECは、これらの実証を通して、地上の試験設備では獲得が難しい知見を得て、競争力の強化を図っている。実証技術の概要は以下の通りである。

1|民生用光通信機器の宇宙適用

NECは、光衛星通信コンステレーション実現に向けて、小型衛星でも大容量伝送を実現できる、民生用通信機器を活用する方針だ。

これまでの宇宙開発では、高い信頼性を確保するため、宇宙専用設計を前提として開発されるのが一般的であったが、近年では開発・製造期間の短縮やコスト低減に向けて、既に地上で使用されている民生品の活用が進んでいる。

NECは本実証において、安価で高性能な民生用光通信機器について、宇宙環境下での放射線耐性を評価する予定である。

2|衛星間通信を成立させる高速ルーティング技術

衛星コンステレーションは、数十から数千機で構成される衛星同士が動的に接続しながらネットワークを形成する構造を持つ。

そのため、軌道上での低遅延・大容量通信を実現するには、通信経路をリアルタイムで最適化する高速ルーティング技術が不可欠であり、地上のネットワーク環境を前提としたルーティング設計とは異なる、高性能なアプリケーションが必要となる。

そこで、本実証では、高速ネットワークルーティング処理に必要な米AMD製の高性能信号処理デバイスの動作を確認。あわせて、NECが蓄積してきた衛星開発の知見と生成AIを組み合わせ、将来の衛星向けアプリケーション開発を高度化・効率化できるかも検証する。

3|将来の高速・大容量通信に向けたミリ波帯通信技術

光通信に加え、ミリ波帯(Q/Vバンド)の電波向け通信機器の動作実証も実施される。また、地上局と通信し、電波の伝搬特性データも取得される予定だ。

この帯域は高速・大容量通信に適している一方で環境影響を受けやすいため、実環境でのデータ取得が重要となる。

光通信衛星コンステレーションに取り組む理由

世界的なデータ需要増加と衛星コンステレーションへの注目

現在、動画配信、クラウドサービス、生成AIの普及により、世界のデータ通信量は指数関数的に増加している。特にAI関連のデータ転送やリアルタイム処理の需要は、従来の想定を大きく上回るペースで拡大している。

また、地上インフラは、コストや地理的制約により整備が難しい領域が存在し、特に海上・航空・山間部や災害時などでは安定した通信を十分に提供できないという構造的な課題を抱えている。

こうした状況の中で、地球全体をカバーできる低軌道衛星コンステレーションが注目されている。多数の小型衛星を連携させることで、従来の静止衛星よりも低遅延かつ広域な通信を実現する仕組みである。

低軌道衛星コンステレーションと通信衛星の比較
低軌道衛星コンステレーションと通信衛星の比較 ©Space Connect

この構造により、地球上のほぼすべての地域に対して通信サービスを提供できる可能性があり、通信の“地理的格差”を解消するインフラとして期待されている。

実際に、海外ではすでに大規模なコンステレーションが構築されており、個人向けインターネット接続から企業・政府用途まで幅広いサービスが展開されている。

次世代の光通信技術への期待

多数の衛星が連携して機能する衛星コンステレーションでは、通信干渉の回避と大容量データ伝送の両立が求められる。その有力な手段として、従来の無線(電波)通信に代わり、光通信の活用が期待されている。

無線通信は、周波数資源に限りがあるうえ、他の電波との干渉が生じるおそれもある。一方、光通信はこうした制約を受けにくく、より大容量かつ高速な通信を実現しやすい。衛星間通信においては、光通信を活用することでデータを効率よく中継でき、コンステレーション全体の通信性能向上につながる可能性がある。

将来的には、衛星間通信の主流が電波から光へと移行し、宇宙空間におけるデータネットワークの基盤が再構築される可能性もある。今回のNECの実証は、こうした技術転換を見据え、次世代の宇宙通信基盤を支える中核技術の確立を目指す取り組みといえる。

さいごに

NECによる今回の技術実証は、日本の宇宙通信分野における重要な挑戦だ。

単一技術ではなく、複数の先端技術を統合した実証という点において、実用化に向けたステージに入っていることが明確になった。2027年の打ち上げとその成果は、日本が宇宙通信インフラ競争の中でどの位置に立つのかを示す重要な指標となりそうだ。

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参考

NEC、日本初の光通信衛星コンステレーションの実現に向けた技術実証衛星...(2026-03-24閲覧)

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