
2026年3月31日、文部科学省は「中小企業イノベーション創出推進事業」の宇宙分野におけるステージゲート審査の結果を公表した 。 本事業は「SBIR(Small Business Innovation Research)制度」に基づくものであり、今回対象となった「民間ロケットの開発・実証」テーマでは、事業フェーズ2からフェーズ3へと進む企業が選定された 。
本記事では、この審査の目的や背景を説明するとともに、フェーズ3への移行が認められた2社および期間延長となった1社の事業内容や評価されたポイントについて整理する。
目次
ステージゲート審査の目的・背景
「中小企業イノベーション創出推進事業」とは、スタートアップ等が持つ革新的な先端技術の社会実装を国が支援し、日本のイノベーション創出を促進することを目的とした制度である。
本事業では、宇宙輸送市場で勝ち残る意志と技術力を有する有望な事業者を選抜し、集中的に支援するため、ステージゲート審査を通じて段階的に事業者を絞り込む仕組みを採用している 。
今回の発表は、事業フェーズ2からフェーズ3への移行にあたって実施された審査結果である 。この審査は、フェーズ3への移行の可否や交付上限額等を評価・判断するものであり 、今回はあらかじめ補助対象事業者を3社から最大2社へ絞り込むことを前提に実施された 。

採択結果と評価ポイント
本テーマ「民間ロケットの開発・実証」は、令和9年度を目標に、国際競争力を持ったロケットの開発・飛行実証を行うスタートアップ企業を支援するものである 。宇宙輸送市場で勝ち残る意志と技術力を有する事業者を選抜し、集中的に支援することで、我が国の宇宙市場の拡大へ貢献することを目指している 。
審査にあたっては、「基本設計が完了しているか」「TRL(技術成熟度)を2027年度中までにレベル7まで引き上げる計画となっているか」といった必須条件が課された 。
採択企業(フェーズ3移行企業)
書面審査とプレゼンテーション審査を通じ、フェーズ3への移行が認められたのは以下の2社である 。
インターステラテクノロジズ株式会社
事業計画名:小型人工衛星 打上げロケットZEROの技術開発・飛行実証
交付額上限:73.7億円(フェーズ3)
事業概要:小型ロケットの技術開発・飛行実証を行う民間単独では日本初となる観測ロケットの宇宙空間到達の実績で得られた知見を土台に、液化メタン燃料ロケットエンジンを新たに開発し、信頼性とコスト競争力を両立させた宇宙輸送サービスを実現させる。
主な評価ポイント:大手自動車メーカーとの業務提携等により、量産に向けた製造ノウハウを取り入れながらロケット打上げを国内産業にしていく可能性が評価された 。また、開発途中の不具合に対する十分なリスク管理や 、ステークホルダーの声に謙虚に耳を傾けるスタートアップらしい組織体制も高く評価されている 。
スペースワン株式会社
事業計画名:増強型ロケットの開発、打上げ実証及び事業化
交付額上限:44.6億円(フェーズ3)
事業概要:現行型カイロスロケット第3段をメタンエンジンを使用する液体ステージに置換する 。誘導制御系の改修、機体製造、射場設備の整備等を実施し、打上げ能力を増した増強型カイロスロケットの開発・飛行実証を行う 。
主な評価ポイント:現行型カイロスロケットを3度打ち上げるなど、着実にロケット打上げの経験を積んでいる点が評価された 。また、機体システム・射場設備の両面で概ね計画通りに開発が進んでおり 、既存の株主等から応援されている点も前向きに捉えられた 。
フェーズ2事業期間の延長が認められた企業
残る1社、将来宇宙輸送システム株式会社については、他社との比較によりフェーズ3への移行はならなかったものの、必須条件を満たし自ら事業継続の意思を示したことで、フェーズ2事業期間の延長が認められた 。なお、本延長期間における事業計画の妥当性及び資金の追加配分の必要性を判断するため、別途審査が行われる予定である。
将来宇宙輸送システム株式会社
事業計画名:小型衛星打上げのための再使用型宇宙輸送システムの開発・実証
事業概要:事業パートナーとの連携体制を構築し、人工衛星の打上げが可能な再使用型の宇宙輸送システムの開発を見据えてデモンストレーション飛行を行う 。補助事業後には商業化に必要な課題克服に取り組み、社会実装を加速させる 。
主な評価ポイント:有人宇宙輸送・再使用型ロケットの実現という他社にはない特徴があり、最終的なビジネスモデルの期待値が高いと評価された 。アジャイル開発等の新規性あるチャレンジを継続しながら基本設計まで完了しており、類を見ないスピード感で技術開発を進めている点が高く評価されている 。
さいごに
今回の審査により、民間ロケットの開発・実証に取り組むスタートアップ企業がさらに選抜され、支援が本格化する 。
フェーズ3に移行したインターステラテクノロジズ社やスペースワン社はもちろんのこと、期間延長となった将来宇宙輸送システム社を含め、各社がチャレンジを継続して革新的な技術開発を進めることで、日本の宇宙輸送分野における社会実装が一層進展することが期待される 。
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