
政府と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月26日、次世代の宇宙科学観測衛星「ライトバード(LiteBIRD)」について、当初予定していた2028年度の打ち上げから、2036年度を目標とする方向で計画を見直していることを明らかにした。
観測機器の調達計画や開発体制の再検討が必要となったことが主な背景にあり、今後は国内外の協力体制を含めた調整が進められる見通しだ。
本記事では、ライトバード計画の概要と、計画延期の背景について解説する。
目次
宇宙科学観測衛星「ライトバード計画」
宇宙の起源に迫る観測ミッションとして、ライトバード計画は日本の宇宙科学を代表する基幹プロジェクトの一つに位置づけられてきた。
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光観測ミッション
ライトバードは、宇宙誕生直後に放射されたとされる宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光を高精度で観測することを目的とした宇宙科学ミッションである。最大の狙いは、ビッグバン直後に宇宙が急激に膨張したとされる「インフレーション」の痕跡を偏光信号から検証する点にある。
CMB偏光は極めて微弱な信号であり、その検出には高度な感度と厳密なノイズ制御が求められる。観測に成功すれば、宇宙誕生直後の物理過程を直接検証できる可能性があり、基礎物理学と宇宙論の双方において極めて高い科学的意義を持つ。
日本主導の国際共同ミッションとしての位置づけ
ライトバードは、日本が主導しつつ、欧米の大学・研究機関と連携して進められている国際共同ミッションである。衛星全体の設計やシステム統合を日本側が担い、観測装置の開発やデータ解析では各国の研究機関が役割分担を行う体制が構築されてきた。
英国、フランス、イタリア、ドイツなどが参画しており、それぞれの専門分野を生かした分業が特徴だ。日本が国際宇宙科学の中核的役割を担う象徴的プロジェクトであり、学術的プレゼンスの観点からも重要な意味を持っている。

計画延期の内容と経緯
ライトバード計画は長期的な研究成果を前提とした大型基礎科学ミッションであり、その進行に応じて計画全体のスケジュールも段階的に見直されてきた。
当初計画からの変更内容
ライトバードは当初、2028年度の打ち上げを目標として計画が立ち上げられた。その後、開発の進展に合わせて計画の精緻化が進められ、次の節目として2032年度への打ち上げ時期見直しが示された。
さらに検討が続けられた結果、今回あらためて2036年度を目標とする方向で調整が進められている。これらの変更は、いずれも計画の中止や縮小を意味するものではなく、長期ミッションとして節目ごとにスケジュールを再評価してきた結果である。
ライトバードは、段階的な見直しを前提とした計画運営が続けられてきたプロジェクトだと言える。
「36年度」への延期を示された理由
今回、2036年度まで打ち上げ時期を見直す判断が示された背景には、主に技術面と開発体制の課題がある。特に大きいのが、CMB偏光観測に用いる超高感度検出器や極低温冷却システムの調達計画である。
これらの機器は世界的にも供給元が限られており、当初想定していたスケジュールでの確保が困難になった。
加えて、国際共同開発に伴う役割分担の再調整や試験工程の組み直しも必要となり、開発体制全体を再設計する必要が生じた。こうした状況を踏まえ、拙速な進行を避け、確実な科学成果を得るための現実的な時間軸として2036年度が設定されたとみられる。
さいごに
ライトバード計画の打ち上げ延期は、スケジュールだけを見れば大幅な後ろ倒しである。しかし、その本質は計画の後退ではなく、科学的成果を最大化するための再構築にある。
CMB偏光観測という人類の宇宙観に直結する挑戦においては、完成度と信頼性が何よりも重視される。
2036年度という新たな目標年は、長期的視点に立った研究投資の象徴であり、日本が基礎科学分野で世界に貢献し続ける意思を示すものだと言える。
参考
JAXA宇宙科学研究所、マイクロ波背景放射偏光観測宇宙望遠鏡(LiteBIRD)








