株式会社アストロスケールの宇宙デブリ除去の実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ)」の打ち上げが、2024年2月18日23時52分頃に予定されている。
ADRAS-Jは宇宙デブリに安全に接近し、デブリの状況を明確に調査するという世界初(※1)のミッションを実施する。
本記事では、今回のミッション内容について簡単にご紹介する。
※1:アストロスケール調べ、2023年
宇宙デブリの脅威
宇宙デブリ(スペースデブリ)は宇宙にある人工的に作られたゴミを指す。
例えば、使用済みのロケットの一部、古い衛星やその破片などがあり、観測可能なものから微細な粒子まで様々だ。
サイズが1㎝以上のデブリは50~90万個、1㎜以上のデブリは1億個以上あると推測されており、これらが地球の周囲を高速で周回。小さなサイズのデブリでも衛星や宇宙船などに衝突した場合、それらの破損や機能停止、さらには新たな宇宙デブリの発生などの大きな被害を引き起こす可能性があり、過去に実際の例も存在する。
現在は、衝突する前に衛星などの位置を変更できるよう、宇宙デブリの状況を監視する技術も用いられているが、数㎝程度の大きさのものは監視できず、危険な宇宙デブリとなっている。
アストロスケールとは
アストロスケールは、宇宙デブリ問題の解決を目指すサービスに専業で取り組む世界初の民間企業。
2013年に創業し、宇宙デブリの低減・除去策として、デブリ化防止装置や既存デブリの除去など様々な技術の開発を進めてきた。
また、長期に渡り安全で持続的な宇宙環境を目指すため、ビジネスモデルの確立や、複数の民間企業や団体、行政機関と協働して宇宙政策などの策定にも取り組んでいる。
現在の累計調達額は約445億円。500名を超えるメンバーが在籍しており、東京の本社に加え、イギリス、アメリカ、フランス、イスラエルに子会社を持ち、グローバルに事業を展開しているのだ。
デブリ除去に関しては、2021年~2022年にデブリ除去に係る一連のコア技術を実証する世界初のミッション「ELSA-d」により、デブリを模した試験用衛星を用いてデブリへの接近技術や捕獲機構の試験に成功している。
アストロスケールがJAXAとデブリ除去に挑む
アストロスケールは、大型デブリ除去等の技術実証を目指す宇宙航空研究開発機構(JAXA)の商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズⅠの契約相手方として選定、契約を受けて、ADRAS-Jを開発した。
CRD2は、「JAXAのすすめる宇宙デブリ除去プログラムを起点に新しい宇宙事業を開拓し、日本企業が新たな市場を獲得する」ことを目指すプロジェクト。
選定された企業がJAXAの提示した機能・安全性を満たす衛星を設計から運用まで実施。JAXAからは、技術的サポートや資金の一部を受け取ることができる。
プロジェクトはフェーズⅠとフェーズⅡの2段階に分かれている。フェーズⅠでは、スペースデブリへの接近、近傍制御を行い、軌道上に長期間放置されたデブリの運動や損傷・劣化がわかる映像を取得する。
フェーズⅡでは、フェーズⅠと同様にデブリへ接近、近傍制御し、更なる映像を取得。そしてターゲットの除去により、デブリ除去技術の軌道上実証を行うのだ。
世界初のミッション詳細
CRD2のフェーズⅠであるADRAS-Jミッションでは、打ち上げ後、デブリとなっている日本のH2Aロケットの一部へ接近し、近傍での運用を実証。
長期にわたり放置されたデブリの回転運動などの運動状態や損傷・劣化状況を撮像する。
デブリへの安全な接近や、デブリの状況の詳細を把握することはデブリ除去を含む宇宙空間でのサービスにおいて不可欠な要素なのだ。
今回のミッションで観察するデブリ(H2Aロケットの一部)は自身の GPSデータを発信しておらず、正確な位置は不明。
地上のアンテナからの観測データをもとに位置を判断することになるが、その地上からの観測による位置情報は、軌道上での観測ほど正確ではないため、その限られた情報をもとに、距離を詰めていく必要があるという。
また、ADRAS-Jミッションでは、日本政府が 2021年11月に公表した「軌道上サービスを実施する人工衛星の管理に係る許可に関するガイドライン」を踏まえ、安全性や透明性のための措置を講じる。
このガイドラインのもとで許認可を受けることにより、ADRAS-J ミッションは軌道上サービスに関する国の規制のあり方についても世界に先駆けて示す先駆的なミッションとなり、ADRAS-J がミッションを通じてこの規制の有効性を示すことで、軌道上サービスの実施が促進されることも期待できるとのことだ。
さいごに
いかがでしたか。
ADRAS-Jの打ち上げは2024年2月18日の23時52分頃、ニュージーランドのマヒア半島にあるRocket Labの第一発射施設にて予定されている。
Youtubeでライブ配信も行われるので、ぜひご覧になってはいかがだろうか。
2月17日のH3ロケット試験機2号機のミッション成功に続き、良い結果を期待したい。