2023年4月26日未明、株式会社ispaceにより行われた「HAKUTO-R」の月面着陸ミッションは、通信が途絶え、完了困難との判断がなされた。
同社によると、「月面に衝突した可能性が高い」とのこと。
着陸寸前までうまくいっていたかのように思える今回のミッション。一体何が原因だったのだろうか。
本記事では、記者会見で述べられた内容をもとに、現時点での情報をまとめた。
当時の状況
まず、当時の状況は以下の通り。
スタートは高度100㎞地点。着陸船は予定通り、周回していた軌道を離脱し、着陸するための楕円軌道に移った。
この楕円軌道は、月の表面に近づくための軌道である。楕円軌道に入ると、メインエンジンを進行方向とは逆に噴射し、減速した。
次に、メインエンジンを一度止め、姿勢制御をおこなうためのエンジンに切り替えた。この姿勢制御も成功。
その後、高度20㎞地点でメインエンジンを再び噴射し、着陸に備えてさらに減速。
そして、高度が3㎞になったところで着陸船の向きを垂直に立てた。
そのまま垂直姿勢を維持しながら降下。高度0地点に近づきつつ、さらにメインエンジンによって速度調整を続ける。
最後の高度0直前となったところで、着陸用のエンジンが発動したところまでは確認された。
ここまでは予定通り。しかし、直後異変が起きた。
着陸予定の高度0地点を過ぎても、着陸船は降下を続けた。高度が-の方向に進んでいったのである。
この間、着陸可能なスピードを維持するため、着陸船はエンジンを噴射し続けた。(エンジンがなければ重力の影響で加速する)
最後、エンジンの燃料が底をつき、速度が大きくなったのが確認された後、通信が途絶えた。
現時点での考察
まず、上記の結果から言えることは、月面に衝突した可能性が高いということだ。
原因として着陸船が高度を見誤っていたことが考えられる。
着陸船が、地表だと思って減速し、着陸を行った地点が、実際には空中だったため、着陸できず、降下を続けることになったのだ。
ここで注意したいのは、燃料不足が、着陸ができなかった根本の原因ではないということ。
というのも、着陸船が地表だと認識していた地点では、まだ余剰の燃料が残っていたためである。
想定していた範囲よりも高度の誤差が大きかった結果、地表につく前に燃料が切れ、月に衝突したと考えられている。
高度を見誤った原因については、現在解析中。
また、着陸地点が予定とは別の地点(高度が異なる地点)になっていたということも考えられるため、垂直だけでなく、水平の位置情報が合っていたかということについても検討していくという。
次のミッションに向け、有力なデータに
ispaceの袴田CEOは、以下のように語った。
着陸直前までのデータを獲得できた民間企業は我々のみだと思いますので、その点では世界に先駆けてデータを獲得できたのではないかと思います。
宇宙の場合、地上だけでは全て検証ができませんので、宇宙に出てデータを獲得することは非常に意義があることだと思います。
特に、月面の着陸のフライトデータは非常に有意義で、ミッション2、3の着陸の蓋然性を大きく上げていくために必須になるデータであると思えます。
地球では月と同じ環境で実験を繰り返して精度を高めることはできないため、シュミレーションを使用することとなります。
そのシュミレーションのデータに実際の数値を入力することで精度が非常に高まるので非常に有意義になると思います。
2週間前に上場したばかりのispace、現在は売りが殺到してるとの事だが、この結果を失敗と捉えるか、逆にチャンスと捉えるかはあなた次第だ。
ミッション2、ミッション3について、現時点でスケジュールに変更はないとのこと。
今回の結果は、必ず将来の成功に繋がるだろう。