
株式会社QPSホールディングス(以下、QPS)は、小型SAR衛星コンステレーションの構築を進める企業である。
本記事では、QPSの概要、最新の打ち上げ予定、これまでの実績について整理する。
目次
- 1 QPS HDとは
- 2 直近の打上げ予定
- 3 QPS-SARの打上げ実績
- 3.1 QPS-SAR1号機「イザナギ」
- 3.2 QPS-SAR2号機「イザナミ」
- 3.3 QPS-SAR3号機「アマテル-I」
- 3.4 QPS-SAR4号機「アマテル-II」
- 3.5 QPS-SAR5号機「ツクヨミ-Ⅰ」
- 3.6 QPS-SAR6号機「アマテル-Ⅲ」
- 3.7 QPS-SAR7号機「ツクヨミ-Ⅱ」
- 3.8 QPS-SAR8号機「アマテル-Ⅳ」
- 3.9 QPS-SAR9号機「スサノオ-Ⅰ」
- 3.10 QPS-SAR10号機「ワダツミ-Ⅰ」
- 3.11 QPS-SAR11号機「ヤマツミ-Ⅰ」
- 3.12 QPS-SAR12号機「クシナダ-Ⅰ」
- 3.13 QPS-SAR14号機「ヤチホコ-Ⅰ」
- 3.14 QPS-SAR15号機「スクナミ-Ⅰ」
- 4 さいごに
QPS HDとは
QPS HDは、福岡県を拠点とする宇宙スタートアップであり、小型の合成開口レーダー(SAR)衛星の開発・運用に特化している。
同社の特徴は、大型・高コストになりがちなSAR衛星を小型化し、量産可能な設計に落とし込んでいる点にある。このアプローチにより、単機での性能ではなく「数」でカバーするコンステレーション戦略を採用している。
最終的には36機体制の衛星網を構築し、世界中のほぼ任意地点を短時間間隔(約10分)で観測可能にすることを目標としている。
直近の打上げ予定
QPSの直近の打上げ予定は、小型SAR衛星QPS-SAR13号機「ミクラ-Ⅰ」である。

同衛星は米国Rocket LabのElectronロケットによって打ち上げられる予定だ。当初は2026年5月以降の打上げ予定とされていたが、ロケット会社のスケジュールの都合により、2026年6月以降へ延期されたことが発表されている。
なお、QPSの衛星番号は打上げ順ではなく、打上げ契約手続き順によって付与されている。そのため、14号機「ヤチホコ-Ⅰ」や15号機「スクナミ-Ⅰ」が13号機より先に打ち上げられており、今後も番号と打上げ順が前後する可能性がある。

QPS-SARの打上げ実績
QPSは、2019年に小型SAR衛星初号機「イザナギ」を打ち上げて以降、QPS-SARシリーズの打上げを継続している。
ここからは、QPS-SAR1号機から12号機、そして14号機・15号機までの打上げ実績を整理する。

QPS-SAR1号機「イザナギ」
QPS-SAR1号機「イザナギ」は、QPSにとって初めての小型SAR衛星である。
2019年12月11日、日本時間18時55分にインドのサティシュ・ダワン宇宙センターからPSLVロケットで打ち上げられた。日本初の100kg台小型SAR衛星として打ち上げられ、QPS-SARシリーズの技術実証における出発点となった。
打上げ翌日の12月12日には初交信に成功し、12月16日にはアンテナ展開にも成功している。一方で、最終的なデータの画像化には至らず、1号機で得られた知見は2号機の改良に活かされた。
| 打上げ日 | 2019年12月11日 |
| ロケット | PSLV |
| 運用状態 | 商用運用に至らず |
QPS-SAR2号機「イザナミ」
QPS-SAR2号機「イザナミ」は、1号機の結果を受けて改良された衛星である。
2021年1月25日、日本時間0時00分にSpaceXのFalcon 9で打ち上げられ、高度約525kmの軌道へ投入された。打上げ翌日に初交信に成功し、同年1月30日にはアンテナ展開にも成功している。
その後、2021年3月3日にはファーストライト(初画像)、の取得成功を発表した。また、同年5月には小型SAR衛星として日本で初めて70cmの高分解能画像取得に成功しており、QPS-SARの実用化に向けた重要な成果となった。
| 打上げ日 | 2021年1月25日 |
| ロケット | Falcon 9 |
| 運用状態 | 運用終了 |
QPS-SAR3号機「アマテル-I」
QPS-SAR3号機「アマテル-I」は、QPS-SAR4号機「アマテル-II」とともに、衛星コンステレーションを構成する最初の2機として開発された。
2022年10月12日、日本時間9時50分に鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所からイプシロンロケット6号機で打ち上げられた。しかし、ロケット側の異常により、衛星を地球周回軌道へ投入できないと判断され、指令破壊信号が送られた。
そのため、QPS-SAR3号機、4号機は軌道投入には至らなかった。
| 打上げ日 | 2022年10月12日 |
| ロケット | イプシロン6号機 |
| 運用状態 | 軌道投入ならず |
QPS-SAR4号機「アマテル-II」
QPS-SAR4号機「アマテル-II」も、3号機「アマテル-I」と同じく、イプシロンロケット6号機に搭載された衛星であり、同様に軌道投入には至らなかった。
| 打上げ日 | 2022年10月12日 |
| ロケット | イプシロン6号機 |
| 運用状態 | 軌道投入ならず |
QPS-SAR5号機「ツクヨミ-Ⅰ」
QPS-SAR5号機「ツクヨミ-Ⅰ」は、2023年12月15日にRocket LabのElectronロケットで打ち上げられた。
当初は5号機が先に打ち上げられる予定だったが、契約していたロケット事業会社側の状況により打上げ日が再調整され、6号機が先に打ち上げられている。そのため、QPS-SAR5号機は6号機の後に打ち上げられた衛星となる。
「ツクヨミ-Ⅰ」はニュージーランドの射場から打ち上げられ、高度約575kmの軌道に投入された。打上げ後には初交信に成功し、翌日には収納型アンテナの展開にも成功している。2024年1月にはファーストライトの取得成功も発表された。
| 打上げ日 | 2023年12月15日 |
| ロケット | Electron |
| 運用状態 | 運用再開 |
QPS-SAR6号機「アマテル-Ⅲ」
QPS-SAR6号機「アマテル-Ⅲ」は、2023年6月13日にSpaceXのFalcon 9で打ち上げられた。
打上げは米国カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から行われ、打上げ79分後に高度約540kmで軌道投入された。同日には初交信に成功し、打上げから21時間後にはアンテナ展開の成功も確認されている。
その後、アジマス分解能46cm、レンジ分解能39cmの高精細画像取得に成功し、当時QPS-SAR2号機「イザナミ」が持っていた民間SAR衛星としての日本最高精細記録を更新した。
| 打上げ日 | 2023年6月13日 |
| ロケット | Falcon 9 |
| 運用状態 | 運用終了 |
QPS-SAR7号機「ツクヨミ-Ⅱ」
QPS-SAR7号機「ツクヨミ-Ⅱ」は、2024年4月8日にSpaceXのFalcon 9「Bandwagon-1」ミッションで打ち上げられた。
傾斜軌道への小型衛星投入を目的とするSpaceXのライドシェアサービス「Bandwagon」の初回ミッションで打ち上げられた衛星であり、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターLC-39Aから打ち上げられている。
予定軌道への投入後、約1時間後には初交信に成功し、同日深夜に収納型アンテナの展開にも成功した。2024年5月にはスポットライトモードによる高精細画像取得にも成功しており、商用機としての運用実績を積み重ねている。
| 打上げ日 | 2024年4月8日 |
| ロケット | Falcon 9 |
| 運用状態 | 運用中 |
QPS-SAR8号機「アマテル-Ⅳ」
QPS-SAR8号機「アマテル-Ⅳ」は、2024年8月17日にSpaceXのFalcon 9「Transporter-11」ミッションで打ち上げられた。
打上げは米国カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から行われ、太陽同期軌道へ投入された。軌道投入から約2時間後には初交信に成功し、同日の夜までにアンテナ展開も完了している。
2024年9月には、ストリップマップモードとスポットライトモードの画像を同時に公開した。これまでの運用から得た知見により、初期運用から画像公開までの調整が効率化されていることがうかがえる。
| 打上げ日 | 2024年8月17日 |
| ロケット | Falcon 9 |
| 運用状態 | 運用中 |
QPS-SAR9号機「スサノオ-Ⅰ」
QPS-SAR9号機「スサノオ-Ⅰ」は、2025年3月15日にRocket LabのElectronロケットで打ち上げられた。
QPSは2025年2月に、Rocket Labと合計8機分の専用打上げ契約を発表しており、9号機は同契約に基づく最初の打上げにあたる。打上げはニュージーランド・マヒア半島のLaunch Complex 1 Pad Bから行われ、予定軌道への投入後、初交信に成功している。
翌日には収納型アンテナの展開にも成功し、2025年4月には初画像としてスポットライトモードによる試験観測画像を公開した。
| 打上げ日 | 2025年3月15日 |
| ロケット | Electron |
| 運用状態 | 運用中 |
QPS-SAR10号機「ワダツミ-Ⅰ」
QPS-SAR10号機「ワダツミ-Ⅰ」は、2025年5月17日にRocket LabのElectronロケットで打ち上げられた。
打上げはニュージーランド・マヒア半島のLaunch Complex 1から行われ、打上げから約50分後に衛星分離に成功した。その約30分後には初交信に成功し、翌日の5月18日夕方には収納型アンテナの展開にも成功している。
2025年6月にはファーストライトとして、スポットライトモードによる試験観測画像が公開された。
| 打上げ日 | 2025年5月17日 |
| ロケット | Electron |
| 運用状態 | 運用中 |
QPS-SAR11号機「ヤマツミ-Ⅰ」
QPS-SAR11号機「ヤマツミ-Ⅰ」は、2025年6月12日にRocket LabのElectronロケットで打ち上げられた。
打上げはニュージーランド・マヒア半島のLaunch Complex 1から行われ、打上げから約50分後にElectronから分離された。その約35分後には初交信に成功し、打上げ当日の夜には収納型アンテナの展開にも成功している。
2025年7月にはファーストライトとして、高精細モードによる観測画像を公開した。9号機、10号機、11号機と短期間で複数機を打ち上げ、初期運用を進めたことは、QPSの量産・運用体制の構築が進んでいることを示す動きといえる。
| 打上げ日 | 2025年6月12日 |
| ロケット | Electron |
| 運用状態 | 運用中 |
QPS-SAR12号機「クシナダ-Ⅰ」
QPS-SAR12号機「クシナダ-Ⅰ」は、2025年8月5日にRocket LabのElectronロケットで打ち上げられた。
打上げはニュージーランド・マヒア半島のLaunch Complex 1から行われ、打上げから約53分後に衛星分離に成功した。その約30分後には初交信に成功し、同日夕方には収納型アンテナの展開にも成功している。
2025年9月にはファーストライトとして、スポットライトモードによる観測画像を公開した。
| 打上げ日 | 2025年8月5日 |
| ロケット | Electron |
| 運用状態 | 運用中 |
QPS-SAR14号機「ヤチホコ-Ⅰ」
QPS-SAR14号機「ヤチホコ-Ⅰ」は、2025年11月6日にRocket LabのElectronロケットで打ち上げられた。
この衛星は、13号機よりも先に打ち上げられた衛星である。QPSによると、衛星番号はロケットの打上げ契約を締結した順に付与されているため、契約の関係上、14号機の打上げが13号機に先行するスケジュールとなった。
「ヤチホコ-Ⅰ」は打上げから約50分後にElectronから分離され、その約35分後に初交信に成功した。さらに、同日の午前中には収納型アンテナの展開にも成功している。2025年11月にはファーストライトとして、スポットライトモードによる観測画像も公開された。
| 打上げ日 | 2025年11月6日 |
| ロケット | Electron |
| 運用状態 | 運用中 |
QPS-SAR15号機「スクナミ-Ⅰ」
QPS-SAR15号機「スクナミ-Ⅰ」は、2025年12月21日にRocket LabのElectronロケットで打ち上げられた。
打上げはニュージーランド・マヒア半島のLaunch Complex 1から行われ、打上げから約50分後にElectronから分離した。そのわずか6分後には初交信に成功し、翌日の午前中には収納型アンテナの展開にも成功している。
2026年1月にはファーストライトとして、スポットライトモードによる高精細画像を公開した。QPSは、2025年に計6機の衛星を打ち上げており、15号機の初画像公開は、コンステレーション構築と量産体制の進展を示す成果となった。
| 打上げ日 | 2025年12月21日 |
| ロケット | Electron |
| 運用状態 | 運用中 |
さいごに
2019年の初号機「イザナギ」から始まったQPS-SARシリーズは、技術実証機を経て、現在では複数機を短期間で打ち上げ、コンステレーション構築に向けた動きが加速している。
直近では、QPS-SAR13号機「ミクラ-Ⅰ」の打上げが2026年6月以降に予定されており、今後、24機体制、さらに36機体制へと衛星数が拡大していく予定だ。
コンステレーションが着実に進むと、さらにQPSのSARデータ提供サービスは、防災、インフラ監視、海洋監視、安全保障など、さまざまな分野で存在感を高めていく可能性がある。
QPSは現在、様々なポジションにて人材を募集している。興味のある方は、業界特化型の人材マッチングサービス「スぺジョブ」をチェックしていただきたい。











