2024年10月28日、文部科学省で開催された宇宙開発利用部会にて、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が進める次世代宇宙輸送システムの取り組み状況が報告された。
宇宙開発が進む中、従来のロケットは打ち上げ後に廃棄されていたが、再利用技術が加わることで低コストかつ高頻度の打ち上げが可能になる。アメリカのSpaceXが再使用ロケットを実用化し注目を集める中、日本も再使用技術の実用化に向けて数々のプロジェクトに取り組んでいる。
本記事では、再使用ロケットのシステムに関するキー技術の獲得を目指す「RV-X」と「CALLISTO」という2つの飛行実験の内容と現在の状況について解説する。
これまでの日本のロケット再利用技術
日本の再使用ロケットについての研究は、実は1990年代から行われている。それが、垂直に離着陸、1つのエンジンのみを持つ再使用ロケット実験機「RVT」だ。
RVTはかつて、垂直離着陸型の完全再使用ロケットの中で世界を主導しており、2003年に行われた第三次離着陸実験(RVT-9)では、42mの高度に到達し、着陸に成功している。
そして、この技術が引き継がれているのが、RVTを大型化した「RV-X」である。
ロケット再利用の実用化に向けたプロジェクト
日本の基礎研究 RV-X(飛行実験フェーズ1)
「RV-X(Reusable Vehicle eXperiment)」は、日本が独自に開発を進める再使用ロケット技術の基礎実験機だ。このプロジェクトの目的は、再使用エンジン技術の熟成や、着陸段階での誘導制御技術などに関する基礎データの取得であり、将来の実用化に向けた重要な一歩を担っている。
JAXAはこれまでのRV-Xの研究において燃焼実験を重ね、エンジンの燃焼データや地上設備の機能確認等を行ってきた。また現在は、飛行試験に向けて機体改修と着陸脚による衝撃吸収特性や転倒防止特性把握のための落下試験も進められている。
2025年度に能代ロケット実験場での飛行試験が計画されており、ロケットが垂直に打ち上げられた後、高度100m程度まで上昇し、再び垂直のまま地上に着陸させる予定だ。そしてこのプロジェクトは、次に紹介する「CALLISTO」プロジェクトにも重要なデータを提供する役割を担っている。
日仏独の国際協力 CALLISTO(飛行実験フェーズ2)
「CALLISTO(Cooperative Action Leading to Launcher Innovation for Stage Toss-back Operation)」は、従来使い捨てであったロケット第一弾(下段)の再使用化を目指した、JAXA、フランス国立宇宙研究センター(CNES)、ドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同で進める国際プロジェクトだ。
これまでに得た主な成果としては、以下のようなものがある。
- 誘導制御技術:ロケットが着陸する際にフィンと推力で精密なコントロールを行う高精度着陸制御技術(特許取得)等
- 推進薬マネジメント技術:姿勢を大きく変更している状態や低重力状態での推進剤の挙動を抑制する技術等
- ヘルスマネジメント技術:エンジン燃焼器を破壊せずに健全性を検査する装置、電動・電磁バルブの故障診断技術等
これらに加えて、現在は、詳細設計の終盤作業、機体および搭載機器の開発試験等が進められている。
日本独自の優位な技術を取り込みつつ、仏・独の宇宙機関との国際協力によって効率的に飛行実験を進めることを計画されており、2026年度に南米ギアナ宇宙センターで飛行試験が予定されている。日本の再使用ロケットはいつ実現する?
JAXAは、2030年代には、抜本的な低コストと高い打ち上げ頻度を実現する次世代の宇宙輸送技術の獲得を目指している。これに向けて再使用技術を軸としたロケットシステムを段階的にアップグレードしていく計画である。
打ち上げ需要動向や技術動向の変化が激しい状況の中で、ロケットの性能目標を柔軟に見直し、最新化するために、段階的な開発プロセスを構築し、技術や人材基盤の維持向上を図っているのだ。
再使用ロケットの実現には高度な技術が必要であり、2段階の飛行実験(RV-X、CALLISTO)により、データ蓄積と技術成熟度の向上を目指すとともに、再使用による経済的な効果を評価する計画を進めている。
また、JAXAは現在、高高度(およそ100㎞)からの帰還技術や、帰還用燃料や着陸脚等の追加に対応するための高性能・軽量化技術、機体を何度も整備しやすくする効率化技術なども並行して開発。
JAXAが技術開発テーマを設定し、支援する企業を公募する宇宙戦略基金を活用して開発するなど、民間事業者と連携することで、日本の技術力の底上げと商業化に向けた開発を加速している。
さいごに
いかがでしたか。
ロケットの再使用技術が実現すると、宇宙ビジネスの可能性は一気に広がる。再使用ロケットは、1回きりの使い捨てに比べて打ち上げコストを大幅に削減でき、さらに多くの衛星や荷物を宇宙へ運ぶことが可能となる。
日本が再使用ロケットの商業化を実現できれば、国際的な宇宙輸送市場での競争力が強化されるだろう。