
2025年10月3日、株式会社アクセルスペース(以下、アクセルスペース)は、オーストラリアの衛星画像および地理空間ソリューション企業Geoimage Pty Ltd(以下、Geoimage)と販売パートナーシップ契約を締結したと発表した。
本記事では、両社の連携概要とその狙い、今後の市場展開の意義について整理する。
企業概要
Geoimage
Geoimageは、1988年に設立されたオーストラリアを代表する衛星画像・地理空間ソリューション企業である。
AIRBUSをはじめ、世界有数の衛星データプロバイダーと提携し、日本国内でもRESTEC(リモート・センシング技術センター)やSynspectiveと協業するなどグローバルなネットワークを築いている。
同社は、エンジニアリング、石油・ガス、農業、政府機関、環境分野など、幅広い産業に対してリモートセンシング技術を活用した解析サービスを提供。
衛星画像の解像度をおよそ2倍に向上させる独自の画像強調技術や、高精細なカラー画像生成アルゴリズムを強みに、正確かつタイムリーなデータ提供を実現している。
アクセルスペース
アクセルスペースは、自社開発の光学小型衛星「GRUS(グルース)」シリーズによる地球観測事業「AxelGlobe(アクセルグローブ)」と、顧客専用衛星の設計・製造・運用をワンストップで支援する「AxelLiner(アクセルライナー)」事業を展開する、日本発の宇宙ベンチャー企業である。
2025年8月には、グループ全体を統括する持株会社「株式会社アクセルスペースホールディングス」が東京証券取引所グロース市場に上場。これにより、研究開発・衛星運用・データビジネスを統合的に強化する体制が確立された。
連携概要と狙い
今回の販売パートナーシップ締結は、アクセルスペースが運用する光学小型衛星「GRUS(グルース)」コンステレーションの観測技術と、Geoimageが持つオーストラリア全域における業界知見および顧客基盤を組み合わせ、農業・環境・インフラなど幅広い分野での地球観測データ活用の拡大を目指すものである。
アクセルスペースは現在、地上分解能2.5mの光学小型衛星「GRUS」5機を運用しており、小型衛星ながら一度の観測で約60km幅を撮影できる広域カバレッジ性能を有する。
2026年には、撮影頻度や観測波長、センサー感度を強化した次世代機「GRUS-3」7機の打上げを予定しており、観測体制の拡充を進めている。
「GRUS」は、超高解像度衛星ほど詳細な描写はないものの、広範囲を迅速に観測できるという特長を持つ。この特性は、広大な国土を持つオーストラリアにおいて特に高い親和性を発揮する。
今回の提携により、Geoimageの高度な解析技術と地域に根ざした顧客支援体制が加わることで、「GRUS」データの実用価値は一層高まり、衛星データの社会実装を加速させることが期待される。
Geoimage CEOのマーク・コヴィントン氏は、次のように述べている。
地球観測の未来は、可能な限り高い地上分解能にあると考えていました。いま、私は「それは間違っていた」と喜んで言います。
広い撮影幅を備えた複数の衛星で構成されるGRUSのコンステレーションには、非常に広大な地域を迅速に撮影する能力があります。アクセルスペースの撮影能力とGeoimageで新たに開発されたサービスを組み合わせることで、大規模な土地管理のための製品を提供できるようになりました。
アクセルスペースは今回の協業を通じて、オーストラリアの産業界および政府機関に対し、衛星データを活用した意思決定の支援を強化していく方針だ。

さいごに
Geoimageの高度な画像解析技術と、多様な産業分野で培われた知見・顧客基盤に、アクセルスペースの光学小型衛星「GRUS」が持つ観測能力のシナジーにより、衛星データの活用領域はこれまで以上に広がっていくと考えられる。
今回の連携は、アクセルスペースにとって地球観測事業を次の段階へと押し上げる重要な契機であり、両社の協働によって、宇宙データが産業や社会の意思決定を支える新たなインフラへと進化していくことが期待される。
参考
アクセルスペース、オーストラリアのGeoimage社と販売パートナーシップ契約を締結(アクセルスペース, 2025-10-06)