シンガポールに法人を持つ新星スタートアップ企業『PLANETES』。
Web3.0×宇宙の領域で市場を席巻しようとする壮大なビジョンとは一体。
またWeb3.0と宇宙を掛け合わせることで、『仮想とリアルの臨界点を超える』とは一体どういうことなのか。
今回は、日本人ファウンダー若元 淳鷹CEOにPLANETESの全容について聞いて参りました。
(本記事は、vol.1とvol.2の2部作構成になっております、この記事はvol.1です)
事業概要
ー PLANETESがどのような会社なのか教えてください。
PLANETESは、宇宙空間での燃料補給いわゆるガソリンスタンドの構築とWeb3.0の技術を掛け合わせることで宇宙の民主化を進める宇宙ベンチャー企業です。
ー 宇宙 × Web3.0の着想はどこから得ましたか。
最初は、宇宙産業を盛り上げたいといった思いから事業が始まっています。
宇宙産業って、これまで政府主導で進めてきた産業ですが、近年、ITビリオネアの参入も相まって、ようやく民間企業の参入が増えてきましたよね。
これをきっかけに、宇宙産業がこれから一大ビジネスになるといった確信が持てました。
とはいえ、この産業の民主化はまだまだ進んでいない。
この問題が解決されない限り、宇宙産業で事業を展開するのは厳しいと感じたわけです。
なんせ、それすなわち業界にヒト・モノ・カネが集まらないのを示唆しているのと同じなので。
この課題の解決策を模索した結果、最近のトレンドになっているWeb3.0の概念と宇宙開発の掛け合わせ。
これこそが最良の選択ではないかと閃いたわけです。
それこそ、日本含め宇宙に興味を持っている潜在ユーザーはかなり多いですし、Web3.0の概念はDAO、つまり産業の民主化なので。
PLANETES × Web3.0
ー Web3.0といっても事業領域は広いですが、宇宙をどのように掛け合わせていきますか。
Web3.0と宇宙の掛け合わせを図る上で、Web3.0の領域では、GameFiの技術を主体にして、事業を展開していく方針です。
アルテミス計画の背景もあって、2040年までに間違いなく、リアルでの月面開発が進むので、その月面の環境を模倣した、惑星開発シミュレーションゲームを作ります。
ー より詳細について教えてください。
現時点での惑星開発シミュレーションゲームの構想としては、宇宙開発にこれまで携わってきた人、こなかった人を含め、ゲーム内に多数のユーザを誘致して、ゲーム内の月面に仮想の経済圏を構築するようなイメージです。
それこそ、マイクラの月面開発バージョンのようなものだと思ってもらえると理解しやすいかと。
ー 大筋は理解しました。GameFiということは、P2Eを通じて、実経済とつながるわけですね。
そういうことです。
我々のゲームを通じて、先に仮想空間にて、月面で経済圏を作ってもらうわけです。
実はこのシミュレーションをすることが、非常に大切なんですよね。
ー なぜですか。より具体的に教えてください。
地球と月では、経済基盤が必ず異なるはずなんです。
例えば、月の市場って新規フロンティアの開拓になるので、基軸通貨になるものがないんですよね。
それに加えて、月面開発市場って、今、各国の利権争いで揉めていますよね。
個人的には、その折衷案として、月での基軸通貨の役割を果たすもの、それがブロックチェーン技術で紐づけられたトークンになるのではないかと思っています。
要するに、国境を取り除いた経済圏が必ずできるはずなんです。
ただ、前例のない経済圏を仮説ベースで構築してしまうと、それは秩序なき混沌とした体制になってしまう可能性があります。
そこで我々、PLANETESの出番です。
ゲーム上で、月面経済圏を構築し、色んなプレイヤーに遊んでもらうことで、この前例のない経済圏の全容が見えてくるわけですよ。
GameFiの特性上、トークン(ゲーム内通貨)が現実世界の通貨と互換性があるので、より現実に即したシミュレーションができるといった具合です。
また、せっかくGameFiでゲームを開発するので、開発したゲームのトークンを数年後のリアルな月面で使用できる通貨になることも視野に入れています。
ー なるほど、社会実験のような要素も含んでいるんですね。ゲームの仕様はVRとかですか。
いえ、初期段階では、PCで遊べるゲームを想定しています。
PCゲームの市場規模は世界全体で大体5兆2500億円程あり、グローバル展開も容易な業界なので、最初の市場規模としては十分なはずです。
もちろん今後、カジュアルゲームとして、iPhoneやAndroidでも遊べるようにしていく予定です。
これからの潮流を鑑みて、VRでの開発も検討していたのですが、まだまだユーザの絶対数が少なく、採算が取れないと思いました。
ー GameFiとなると、コミュニティ運営やユーザの確保が非常に重要になりますよね。その辺りの戦略はどのようにお考えですか。
基本的に、コミュニティ運営もユーザの確保もWeb3.0が土台なので、自治的に回るシステムを作らないといけません。
なので、戦略としては当然ですが、我々のゲームが中長期的に見て、ユーザ満足度が高い設計になるよう意識しています。
具体的に言えば、ゲームを通じて、リアルの宇宙開発と直接繋がることです。
これまでのGameFiってお金を稼ぐため、いわば投機目的で使用しているプレイヤーが大半なわけです。
実際にリアルの世界に還元したり、業界との繋がりを誰でも密に持てるってのが、BCG(ブロックチェーンゲーム)の魅力であるはずなのに、勿体無いなとずっと思っていました。
なので、半永久的にこのゲームを使用してもらうためにも、リアルの月面開発と繋がるような仕組みを作っています。
ー 具体的に教えてください。
例えば、ゲーム内で提供するミッションを達成するために、宇宙開発に直接携わっている人と携わっていないユーザが連携して、ミッションを達成するような仕様を検討しています。
それこそ、リアルの世界で月面ローバを開発している企業とゲーム内でチームを組めるような設計とかですね。
また、リアルの月面に建造物を建設したい企業様のアセットをゲーム内に配置する等も考えています。
そうすることで、ユーザはこれから2050年にかけて実施される月面開発の臨場感をゲーム内で体験することができるわけです。
ユーザも最初は投機目的や単純にゲームで遊ぶことを目的に入ってきてもらっていいんです。
ただこのゲームでの体験を通じて、一般ユーザの宇宙開発に関する解像度も高まっていく。
そうすると、宇宙開発市場ってこれまでの経験を活かして、参入できることも多いんだなと思うユーザが必ず増えてきます。
私も後から気が付いた1人なのでわかります。
このような好循環を生み出すことができれば、宇宙産業も加速度的に広がっていくわけです。
ー STEAM教育のような観点も含まれてるんですね。確かに宇宙兄弟を読んで、宇宙産業に興味を持ったり、リーガルハイを見て、弁護士を目指す人も多いですよね。
そうですね。
まさにそういうきっかけを与えるような企業をPLANETESは目指しているわけです。
実際に、アメリカの米軍では、シューティングゲームを兵士にやらせることで戦場の訓練をさせることを推奨しています。
そのシューティングゲームが流行る前は、戦争のボードゲームを推奨していたりします。
なので、宇宙開発に携わるのであれば、我々のゲームをすれば、全てがわかる。
このような土台づくりをすることが我々のミッションですね。
ー 他にゲーム内の要素として、工夫してる要素はありますか。
工夫ですか。
それこそ先程の話とも繋がるんですが、宇宙産業の民主化が非常に重要な要素になってくるので、宇宙開発をしている人としていない人、この両者間の流動性を高めるためにコミュニティ基盤の強化を意識していています。
宇宙産業の知見がある人に有利すぎるミッションを増やすと、金銭的なリスクを恐れ、一般ユーザの参画が遠ざかってしまいます。
すなわち、宇宙の民主化から離れることを意味しています。
この問題を解決するためにも、コミュニティ内の流動性は非常に大切ですね。
これはまだ構想ベースですが、ゲーム攻略にあたり、宇宙開発に携わっている人、そうでない人、この両方でチームを組んだ方が、ミッションを達成しやすいような設計になるといいなと思っています。
こうすることで、宇宙開発に携わる人と一般ユーザのコミュニケーションの機会が増えるわけで。
要するに、ゲームを通じて、一般ユーザにも宇宙開発の知見が溜まっていきますし、宇宙開発に注力してきた人は、経済圏、いや、新たな文化圏が醸成されていくイメージが湧いてくるわけです。
そうなると、やがてゲームとリアルの臨界点を超えるわけですよ。
面白いと思いませんか。
Z世代の次のα世代は、現実と仮想空間の区別がつかない世代とも言われているので、私たちの構想は間違いなく今の社会の流れを捉えていると言えるはずです。
PLANETES × 宇宙
ー いや、本当に面白い。今後の戦略としてPLANETESもリアルな宇宙開発に参入するということですか。
もちろんそうです。
むしろWeb3.0事業と並行して、宇宙開発も進めていく予定です。
実は、宇宙開発を本格的に進めていくためにも水面下では、宇宙開発チームの体制も出来上がりつつあります。
ー やはり、そうですか。宇宙開発事業については、GameFiの世界観と擬えて月面開発市場に参入する予定ですか。
いや、実はそうではないです。
私たちが進めている宇宙開発は、衛星のための燃料補給基地の建設です。
ー 人工衛星の燃料補給基地って需要があるんですか。
もう需要しかないですよ。
最近だと人工衛星の活用需要が著しく増えているのに、衛星を輸送するロケットの打ち上げ状況は壊滅的なんですよね。
それこそ輸送まで1年待ちとかですよ。
だからといって、ロケットの打ち上げ頻度の問題が、直近で解決されるとは考えにくい。
ならいっそのこと、衛星を打ち上げる頻度を増やすより、衛星を再使用できる仕組みづくりに尽力した方がいいのでは、といった流れです。
それこそ、衛星を大量に打ち上げないといけないモデルでは厳しいですが、月や火星、深宇宙の開発に使用する探査機であれば十分効力を発揮しますし、需要も間違いなく、拡大していくので。
そのような中で、惑星探査機や軌道間輸送機が離発着できるような衛星基地が宇宙にあるのは革命的なわけです。
ー ISSの老朽化に伴い、日本だとDigitalBlastを始め、世界中でポストISSの開発が盛んになっていますが、PLANETESもこの市場に参入するわけですね。
はい、その通りです。
ただ、DigitalBlastは完全に有人向けの宇宙ステーションになるのに対して、私たちが開発しているのは、無人の宇宙ステーション。
無人機が離発着するというか、そのようなハブになることを目指しています。
要するに、人工衛星用のセルフガソリンスタンドですよ。
ー 燃料補給基地の開発となると多額の資金調達が必要になると思いますが、そこでGameFiを結びつくわけですね。
その通りです。
もちろん通常通りエクイティでの資金調達も実施しますが、仮想の月面土地を売買したり、あとはGameFi内でのトークンを上場させることも絡めて資金調達をします。
たくさんの人にゲームを遊んでもらうことにより、それが結果として、私たちPLANETESの認知拡大にも繋がるので、私たちが作る燃料補給基地のファンが増えるわけです。
そういった面では、これまで宇宙開発をしてきた企業とは違った戦略を取っていると言えますね。
ー 今の宇宙産業はまだまだ政府の予算に依存しているので、たくさんのユーザと連携して、資金調達をするのは、若元さんのような人望の厚い人だから取れる戦略ですね。
さいごに
いかがでしたか。
vol.1では、会社の概要について軽く触れましたが、vol.2ではより深いところまで。
PLANETESのファウンダー若元淳鷹CEOが描くPLANETES×Web3.0×宇宙の行く末について言及しています。
『仮想とリアルの臨界点を超える』この本質がわかるのがvol.2になるので、ぜひご覧あれ。
参考: